数年前からの不動産投資ブームによって、投資用マンションを所有している方は多いのではないでしょうか?
投資用の不動産は良いタイミングで売却することによってさらに利益の最大化を図ることができます。また、売却を考えているのであれば事前に売却を成功させるコツを押さえておきましょう。
この記事では投資用マンションを売却するタイミングや売却の流れ、売却を成功させるコツについて詳しく解説していきます。
投資用マンションの売却を検討すべき7つのタイミング
投資用マンションは次の7つのいずれかのタイミングで売却することで、損失なく利益を得られる可能性が高いでしょう。
上記のタイミングを逃してしまうと投資用マンションを売却することが著しく難しくなってしまうことがあるので、タイミングを逃さないことが重要です。
投資用マンションの売却を検討すべき7つのタイミングについて詳しく解説していきます。
購入から5年を超えたタイミング
マンションを売却して利益が出ると、所得税と住民税が課税されます。
この税率は所有期間が5年超えか5年未満かによって異なり、所有期間が5年超のタイミングで売却する方が得策です。
購入から5年を超えた後に売却すると、その所得は長期譲渡所得という扱いなります。保有期間5年未満と比較すると、次のように税率が優遇されます。
長期譲渡所得(所有期間が5年超) | 短期譲渡所得(所有期間が5年未満) | |
譲渡所得税率 | 15% | 30% |
住民税率 | 5% | 9% |
所有期間が5年以上になったタイミングで売却すれば、譲渡所得税率は半分になります。
つまり、譲渡所得が出るのであれば所有期間が5年を経過するまで待ってから売却した方が税負担は非常に軽くなります。
「所有してからもう少しで5年経つ」という物件であれば、5年を経過するまで待ちましょう。
売却金額が購入金額を超えるタイミング
売却金額が購入金額を超えるタイミング。
つまり、当初マンションを購入した買値よりも売値の方が高いのであれば不動産を売却するタイミングの1つだと言えます。
価格の変動が激しく、経年とともに価値が下がっていくのがマンションです。
にもかかわらず、売価が買値を超えるのであれば、投資としては大成功です。
売価が買値を超えているのであれば、売却して別の物件への投資を検討すべきでしょう。
家賃と売却金額の合計が購入金額を超えるタイミング
これまで入金されてきた家賃と売却金額の合計が購入金額を超えるタイミングも、投資用マンションを売却すべき有力なタイミングの1つです。
基本的にマンションの価値は年数の経過とともに下がっていくものです。
そのため、これまで収入として得た家賃と売価の合計で購入金額を超えるのであれば投資として失敗とは言えません。
もう少し収益性の高い物件があるのであれば、このタイミングで売却し他の物件へと乗り換えるのも有効な方法でしょう。
不動産市況が活況なタイミング
不動産投資が活発に行われており、いわゆる「景気がいい」というタイミングも投資用マンションの売り時です。
- 売値が高くなる
- すぐに売れる
市況が活況なタイミングは、通常よりもマンションの売価が高くなるだけでなく、すぐに売れるという大きな特徴があります。
「すぐにお金が必要」という方はこのタイミングで売却することによって、少しでも高く、その上早く現金化できるでしょう。
減価償却費が元金返済額を下回るタイミング
マンションを所有することによって、キャッシュフローがマイナスになるタイミングがあります。
このタイミングも投資用マンションの売却を検討すべきタイミングの1つだと言えるでしょう。
これは具体的には、減価償却費用が1年間のローンの元金返済額を下回った状態です。
借入金の元金返済額は経費にできませんが、その分減価償却費用は現金支出を伴わずに経費にすることが可能です。
しかし、時間の経過とともに建物が古くなれば経費計上できる減価償却費が少なくなるので、帳簿上は利益が大きくなり、利益に対して課税される所得税が大きくなります。
つまり、建物が古くなり、家賃収入が変わらないと、税金の支払いの分だけ現金の支出が大きくなります。 この減価償却費が元金返済額を下回る状態を「デッドクロス」と言います。
投資用マンションを購入する際にはデッドクロスのタイミングをあらかじめ計算し、このタイミングに売りに出すことでキャッシュフローのマイナスを避けることが可能です。
大規模修繕前のタイミング
大規模修繕前も売却のタイミングと言えます。
大規模修繕をいざ行うというタイミングでは投資用マンションオーナーには次のようなリスクがあります。
- 修繕積立金が値上げされる
- 不足分はオーナー負担になる
- 大家同士の合意形成ができずに修繕が行えない
築15年ほどの大規模修繕が行われる直前のタイミングでは、修繕積立金が不足しているために値上げされることがあります。
さらにそれでも不足していた場合には、不足分を各オーナーが負担しなければなりません。
これらに反対するオーナーが多数いる場合には、大規模修繕そのものを行うことができずに修繕ができないこともあります。
すると、建物の価値がみるみる下落していきます。 いずれにせよ、大規模修繕の前後はオーナーにとってプラスになることはほとんどありません。
マンションを売却すべき1つのタイミングとして、最初の大規模修繕が行われる前に検討しましょう。
空室率が上昇したタイミング
空室率が上昇したタイミングでもマンション売却を検討すべきです。
空室率が上昇すると、管理費も修繕積立金も想定していた額よりも下回ることがあります。
管理費が不足すれば管理組合やマンションの管理そのものが機能しなくなります。 また、修繕積立金が不足すれば大規模修繕を行うことができません。
つまり、空室率が上昇すればするほど、マンションは管理や修繕が不可能になり、建物はどんどん劣化していきます。
一般的に空室率が30%を超えると、管理も修繕もできないゴーストタウンになりやすいと言われているので、所有しているマンションの空室率が30%に近づいてきたら売却を検討すべきでしょう。
投資用マンションが売りやすい5つのタイミング
投資用マンションは次の5つのタイミングになると売りやすいと言われています。
投資用マンションの売却を検討しているのであれば、上記いずれかのタイミングで売却活動を始めてみるとよいでしょう。
入居者がいるタイミング
入居者がいるタイミングは投資用マンションを売却する1つの有効なポイントです。
入居者が存在するということは、新しいオーナーにとっても購入後すぐに家賃が入金になるということです。
また、オーナーチェンジ物件として日本全国の投資家に対して売却活動をすることができます。
投資用物件として売却するのであれば、空き家になってからではなく入居者が存在し、家賃収入がしっかりと確保できているタイミングで売りに出した方が売りやすくなります。
空室が出たタイミング
入居者がいた方が投資用物件として売りやすいのは間違いありません。
しかし居住用物件として一般個人へ売却するのであれば、空室の状態の方が売りやすいでしょう。
住むことを目的としている人はすぐに入居できる物件を探していることが多く、また、購入後にリフォームを希望することも多いので、その場合は空室状態で売りに出した方が圧倒的に売りやすくなります。
すぐに入居できることはもちろん、空室であれば内見時に購入後の生活をイメージしやすいためです。
賃借人がいるのであれば投資用として、空室であれば居住用として売却することでマンションを売りやすくできます。
金利が下がったタイミング
金利が下がったタイミングも売却に適したタイミングです。
金利が下がればお金が借りやすくなり、他の投資家や住宅購入希望者に対してマンションが売りやすくなるためです。
また、所有しているマンションを手放して、他の投資用物件を購入する予定でいる場合も不足分を有利な条件で借りることができます。
金利が下がったタイミングはマンションを売却しやすく、買い替えたい場合も他の物件を購入しやすいので売却に適しているタイミングと言えます。
築20年を迎える前のタイミング
築20年を超えたマンションは建物の耐用年数の関係から、購入者は15年〜20年程度のローンしか組むことができません。そのため、著しくマンションが売りにくくなってしまいます。
一方、築20年以内のマンションであれば、新築のマンションと同じように最長35年ローンを組むことができるのが一般的です。
つまり、築20年を超える前の方が買主が住宅ローンを組みやすいので、投資用マンションの買い手を探しやすいと言えます。
築20年を経過する前に売ることで、マンションは非常に売りやすくなるでしょう。
3月〜4月に合わせて売却する
人が動く時期にマンションを売りに出した方が、マンションが売りやすいことは間違いありません。
一般的に3月と4月は新生活に向けて不動産が動く時期なので、この時期に合わせて売りに出すことで、マンションは売りやすいでしょう。
マンションの売却には3ヶ月〜4ヶ月程度の時間がかかると言われています。 3月〜4月に合わせて販売するためには、11月〜12月くらいから売りに出すことによってスムーズに売却できる可能性は高くなるでしょう。
投資用マンションを売却する流れ
投資用マンションを売却する大まかな流れは次の通りです。
基本的には居住用のマンション売却と流れは同じです。 スムーズに売却することができるよう、投資用のマンションを売却する流れを詳しく見ていきましょう。
管理会社へ連絡する
まずは管理会社へ連絡しましょう。
管理会社へ連絡し、管理費と修繕積立金の精算を行わなければなりません。
売却が決まってからでも行うことができますが、早めに伝えておき事前に手続き方法を確認しておくことでスムーズに売却手続きを進めることができます。
相場を調査する
次に、マンションの売却相場を確認しておきましょう。
不動産会社に任せっぱなしでは最悪の場合、相場よりも安い価格で売られてしまうこともあります。
まずは相場を調査して、所有している投資用マンションと同種の物件がいくらで売却されているのかを把握しましょう。
相場を把握することによって、不動産会社が査定した自分のマンションの売り出し価格が適正なのか否か判断することができます。
必要書類を揃える
マンション売却に必要な書類を揃えましょう。 投資用マンションの売却に必要な主な書類は次のとおりです。
販売活動および売買契約を行う際には、不動産会社から必要書類の一覧を伝えられます。 その時に焦ることがないよう、できる限り事前に必要な書類を揃えておきましょう。
不動産会社から査定を受ける
売却の準備が整ったら不動産会社から査定を受けます。
なお、不動産会社によって査定額は異なるので注意が必要です。
早く売却して利益を得たいと考える不動産会社は相場よりも安い価格で査定しますし、反対に手数料目当てや売却依頼を受けたいがために高い価格で査定する会社もあります。
どちらか一方の価格に偏ってしまうことがないよう、複数の不動産会社へ査定を依頼した方が無難です。
媒介契約を締結する
投資用マンションの売却を任せる不動産会社が決まったら、媒介契約を締結しましょう。 不動産の媒介契約には次の3つの形態があります。
媒介契約の種類 | 特徴 | レインズへの登録 |
一般媒介契約 | ・複数社と契約できる ・自分でも購入者を探せる ・不動産会社は売主への報告義務なし | ・登録義務なし |
専任媒介契約 | ・1社のみ契約できる ・自分でも購入者を探せる ・不動産会社は売主へ14日に1回の報告義務あり | ・媒介契約を締結した翌日から7日以内に登録義務あり |
専属専任媒介契約 | ・1社のみ契約できる ・自分で購入者を探せない ・不動産会社は売主へ7日に1回の報告義務あり | ・媒介契約を締結した翌日から5日以内に登録義務あり |
複数の不動産会社を競合させたい場合や、信頼できる不動産会社が見つからない場合は一般媒介契約、信頼できる不動産会社1社に任せたい場合には(専属)専任媒介契約を締結しましょう。
なお、媒介契約締結の段階ではお金はかかりません。
不動産会社に対して費用が必要になるのは売却が成立した際の仲介手数料のみです。
媒介契約の段階で、「手数料」や「広告料」などの費用を要求してくる業者は宅建業法違反であり、悪徳不動産会社である可能性が非常に高いので、そのような業者とは取引しないようにしましょう。
売却活動
不動産会社と媒介契約を締結した後は、不動産会社は売却活動に入ります。
基本的には不動産会社が自社のチャネルや、レインズから購入希望者を探してくれますが、完全に任せきりにすることはおすすめできません。
部屋の情報などはできる限り多く提供し、居住者もしくは所有者しか知り得ない情報を提供した方が、購入希望者が興味を持つ可能性は高くなります。
不動産会社があなたの不動産を掲載している情報に落ち度や不足がないか十分に確認し、不足している情報があるのであれば不動産会社に連絡するなど、情報のブラッシュアップに努めましょう。
なお、一般媒介契約や専任媒介契約であれば売主自ら買い手を探すこともできるので、心当たりがあるのであれば知人などへ自ら売却活動を行うことも有効な方法です。
売買契約
売り手が見つかったら売買契約を締結します。
売買契約は売主・仲介業者(売主側)・買主・仲介業者(買主側)が集まって行うのが一般的です。
この際に手付金の支払いも行われます。
引き渡し
引き渡しとは単に売価を支払ってもらうだけではありません。
- 売買代金の精算(売却金額から手付金を控除した金額)
- 固定資産税と管理費・修繕積立金の清算
- 賃借人の家賃の清算
- 賃借人から預かっている敷金等の移行
- ローンの返済
- 司法書士による所有権移転登記の手続き
これら全てを同時に行います。
同時に行うことによって、漏れなく確実に売主から買主へ不動産を引き渡すことができ、銀行は確実に融資金を回収することができます。
なお、ローンがある場合には抵当権が設定されているため、所有権の移転登記と同時に抵当権抹消の手続きも行います。
ここまで完了したら、売却手続き完了です。
投資用マンションの売却で必要な費用
投資用マンションの売却で必要になる費用は次のとおりです。
必要費用も居住用マンション売却時と変わりありません。
投資用マンション売却に必要な費用について詳しく解説していきます。
印紙税
不動産の売買契約書には収入印紙を貼付しなければなりません。
収入印紙代は売買契約金額に応じて次のように異なります。
契約金額 | 印紙代 |
---|---|
100万円超500万円以下 | 1,000円 |
500万円超1千万円以下 | 5,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 10,000円 |
5,000万円超1億円以下 | 30,000円 |
1億円超5億円以下 | 60,000円 |
5億円超10億円以下 | 160,000円 |
10億円超50億円以下 | 320,000円 |
50億円超 | 480,000円 |
例えば、投資用マンションを3,000万円で売却するのであれば、印紙代として10,000円が必要になります。
譲渡所得税
投資用物件を売却して所得が発生した場合には、その所得に対して譲渡所得税が課税されます。
投資用のマンションを売却した際に所得が発生しないのであれば、税金は課税されません。
投資用物件の場合は控除が少ないので注意
投資用のマンションを売却する際には居住用不動産を売却した際に適用される次のような税金の控除を受けることができないので注意しましょう。
- 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
- 不動産買い替えの特例
投資用の不動産を売却した場合には、居住用の不動産を売却した際に適用されるこれらの特別控除の適用が受けられません。
売却によって利益が出る場合、特別控除がないので高い確率で税金の支払いが必要になるという点は理解しておきましょう。
住民税
所得が出た場合には、譲渡所得税とは別に住民税も課税されます。
抵当権抹消の登記費用
売却した不動産をローンを利用して購入した場合には、当該ローンを借りた際に設定された抵当権を抹消する手続きも必要です。
司法書士に抵当権抹消手続きを依頼する場合には、司法書士への報酬を含めて1万円〜3万円程度の費用が必要になります。
投資用マンション売却を成功させるポイント
投資用マンションを売却する際には、居住用のマンションを売却する時とは異なる次のポイントを押さえる必要があります。
投資用マンションの売却を成功させるための3つのポイントについて解説していきます。
投資用マンション売却に強い不動産会社を選ぶ
投資用マンションを売却する際には、投資用マンション売却に強い不動産会社と媒介契約を締結するのがベストです。 不動産会社は会社によって強みが異なります。
投資向け不動産売買の仲介を得意としているところもあれば、ファミリータイプの居住用物件の売買や戸建ての売買を得意としているところ、賃貸の仲介がメインのところ、開発を得意としているディベロッパーなどさまざまです。
投資用マンションの売買を得意としている会社の特徴は次のとおりです。
- ホームページに投資向けマンションの売却実績が多数掲載されている
- ホームページに売却案件が多数掲載されている
その不動産会社が何を得意としているかは、不動産会社のホームページを確認することで把握できることがあります。
媒介契約を締結する前に、必ず不動産会社のホームページやネットの情報をチェックして「投資用マンション売買を得意としている会社かどうか」を確認しましょう。
投資用物件は全国ネットの不動産会社がベター
投資用物件を売却する場合には、地域密着型の不動産会社だけでなく、全国ネットの不動産会社にも相談しましょう。
投資用物件は日本全国から買い手が見つかる可能性があります。
利回りのよい物件は、たとえ物件が遠くても遠方の投資家が購入を希望する可能性があるので、日本全国の人へ売却情報を周知できる大手不動産会社へ依頼した方が無難です。
一般個人向けの居住用物件として売却する場合には、地域密着型の不動産会社へ相談するのがよいでしょう。
一括査定サイトを活用する
不動産の査定額は不動産会社によって異なるので、査定は複数社から受けるのが基本です。 しかし、「そんなに多くの不動産会社は知らないし、複数の不動産会社へ相談するのは面倒」という人も多いのではないでしょうか?
そのような場合には、不動産一括査定サイトを活用しましょう。
不動産一括査定サイトは、WEBサイトから売りたいマンションの情報を一度入力して送信するだけで、複数の不動産会社から査定を取得することができます。
不動産会社を比較するのに役立ちますし、非常に簡単に複数社から査定を得られるのが大きなメリットです。
また、基本的に一括査定サイトに不動産会社が加盟する際には、サイト運営者からの一定の審査をクリアしなければなりません。
つまり、一括査定サイトに登録しているのは一定の基準をクリアした安心な企業であるため「初めての不動産会社は怖くて抵抗がある」という方も安心して査定を得ることが可能です。
まとめ
投資用マンションは所有年数や空室率などの状況によって売却を検討した方が良いタイミングがあります。
建物の劣化や空室率がひどくなってしまうと、中古マンションは著しく売却が難しくなります。
投資用マンションは、購入時から売却の際の撤退戦略まで考えて購入するのがベストです。
投資用マンションはどのようなタイミングで売却すべきなのかをしっかりと把握して、効率の良い不動産投資を行なっていきましょう。