土地の売却手段として「買取」と「仲介」の2つの方法があります。
急いで現金化したい場合や手間なく売却したい場合、なかなか売れない土地を抱えている場合などには買取の方がおすすめです。
土地の売却を検討している人は買取と仲介の違いやそれぞれのメリット・デメリットについて把握し、最適な方法を選択すべきでしょう。
買取の特徴やメリット・デメリット、少しでも高く買い取ってもらう方法、買取を利用すべき状況はどのような時かなどについて詳しく解説していきます。
買取と仲介の違い
土地を売却する方法として、買取と仲介という2つの方法があります。
売りたい土地がある場合、それぞれの違いを理解して最適な方法を売主自ら選択しなければなりません。
まずは買取と仲介の違いについて詳しく解説していきます。
買取は不動産会社へ売却すること
買取とは、不動産会社に不動産を売却することです。
買い手を不動産会社に探してもらうのではなく、不動産会社へ直接売却することができます。
不動産会社の中には、分譲や転売のために土地を仕入れたいと考えている業者が存在します。
このような業者は積極的に土地の買取をしているため、直接買い取ってもらうことができるでしょう。
買取の手順は非常にシンプルで、次のような流れで売却します。
仲介は不動産会社が買い手を探すこと
仲介とは、不動産会社が買い手を探し、基本的には不動産会社ではなくエンドユーザーに対して不動産を売却する方法です。
あくまでも不動産会社は買い手を探す役目になります。
仲介で売却する流れは次の通りです。
買取と比較してプロセスが若干複雑になっている点が特徴です。
仲介のメリットとデメリットについて詳しく見ていきましょう。
仲介のメリット
仲介のメリットは次の通りです。
- 買取よりも高く売却できる
- 誰が購入するか分かる
エンドユーザーへ売却する仲介は仕入れ値で購入する買取よりも2割〜3割程度高い値で売却できるのが最大のメリットです。
また、希望すれば購入者の顔を見ることができるので、誰に売却するのか分かり、売り手にとっても近所の人にとっても安心です。
仲介のデメリット
買取よりも高値で売却できる仲介ですが、次のようなデメリットもあるため理解しておきましょう。
- 売却までに時間がかかる
- 条件が悪いと売却できない
- 仲介手数料がかかる
- 契約不適合責任に問われる可能性がある
- 測量をしなければならないことがある
仲介では買い手のエンドユーザーが見つかるまで3ヶ月〜半年程度の時間がかかってしまい、そもそも土地の条件が悪いなどの理由で買い手が見つからなければ売却することは不可能です。
また、仲介で売却する場合は不動産会社に対して仲介手数料を支払わなければなりません。
さらに、エンドユーザーに売却する場合は契約不適合責任を負わなければならならないのも大きなデメリットです。
契約不適合責任とは、目的物(土地)が契約の内容に適合しない場合に売主が負う責任のことをいいます。例えば、契約書に記載されていない瑕疵が発見された場合、売主はその瑕疵に対する責任として瑕疵の修補や損害賠償などを負わなければならないというものです。
また、境界が不明瞭な土地を売却する場合などは、売却前に測量をしなければならないため、数十万円〜100万円以上の費用がかかる場合もあります。
買取価格の相場は市場価格の7割〜8割程度
買取は不動産会社へ売却するため、どうしても市場価格で売却できる仲介よりも売値が安くなってしまいます。
不動産会社は、不動産を市場価格よりもできるだけ安い値で仕入れて高く売ることを生業としているためです。
簡素な手続きで素早く不動産の売却ができる買取ですが、売却するまでの時間に余裕があるのであれば、まずは仲介によって買い手を探した方が売却価格は高くなるでしょう。
買取の8つのメリット
不動産会社に対して直接土地を売却する方法である買取には次の8つのメリットがあります。
買取は素早く簡単に現金化することができ、不動産の売却に伴うさまざまな法的責任が問われないという点が最大の特徴です。
買取の8つのメリットについて詳しく解説していきます。
素早く確実に現金化できる
買取は不動産会社へ直接不動産を売却する方法です。
不動産会社や条件にもよりますが、最短数日で売却することができ、遅くとも1ヶ月以内には売却することが可能です。
そのため、素早く、かつ確実に現金化できるのが大きなメリットです。
仲介のように買い手が見つかるまで待つ時間は必要ありません。
「早くまとまったお金が必要」「早く売却してしまいたい」という方は、仲介ではなく買取の方が迅速かつ確実に現金化することができるのでおすすめします。
仲介手数料が発生しない
不動産会社へ直接不動産を売却する買取では、仲介手数料が発生しません。
売却の際に必要となる経費は、収入印紙代と所得が出た際の税金くらいです。
そのかわり、売却価格は仲介で売却する場合よりも安くなりますが、仲介手数料分の経費が削減できるのは買取のメリットです。
必要資金の目処がすぐに立つ
買取では不動産会社へ相談した段階ですぐに「〇〇万円で売却できる」ということが分かります。
お金を必要としているタイミングでは、土地の売却によっていくら入金になるのかをすぐに把握した方が資金計画が立てやすくなります。
他方、仲介の場合、売却価格は買主との交渉になるので、売りに出したタイミングでは実際のところいくらで売却できるのかは分かりません。
また、そもそも売却そのものができるのかも不透明です。
確実に売却でき、買取価格もすぐに判明する買取の方が資金計画を立てやすいのはメリットだと言えます。
家を解体するお金がかからない
売りたい土地に老朽化した家などが建っていることもあるでしょう。
買取の場合、建っている家を解体せずに売却することも可能です。
仲介では老朽化した家は解体し更地にして売却した方が売りやすくなることが多いですが、さまざまな活用方法を把握している不動産会社へ売却する場合には解体せずにそのままの状態で売却できることもあります。
家の解体費用には200万円前後の費用がかかることが一般的ですが、買取の場合にはこの費用を節約できる可能性があります。
解体にかかるコストも時間もかけずに売却できるのは買取の大きなメリットの1つだと言えるでしょう。
近所に知られず売却可能
買取は近所の人や知人に知られず売却することができます。
仲介で売却する場合は、売却活動の中で不動産会社のホームページやポータルサイトなどに「売り物件」として不動産情報が掲載されるので、近所の人や知人に「土地を売りに出している」ということを知られてしまう可能性が非常に高くなります。
他方、買取であれば不動産会社へ直接売却するため、ホームページなどで公にされる心配はありません。
売却が完了するまでは誰にも知られずにすむので、「できる限り周囲に知られずに売却したい」という方にとっては買取の方が向いているでしょう。
契約不適合責任の免責ができ後からトラブルにならない
不動産の売却には契約不適合責任が伴います。
もし引き渡した土地が契約の内容に適合しないことが判明した場合、売主は買主に対して代金の減額や損害賠償などの責任を負うことになるため、売主にとっては不動産売買における大きなリスクとなります。
しかし、買取の場合は契約不適合責任を免責とすることが一般的です。
つまり、不動産会社へ売却した後に契約の内容に適合しない不具合などが発覚しても、売主は不動産会社から責任を問われる心配はありません。
契約不適合責任を負う必要のない買取の方が売った後にトラブルになる可能性が低いので、安心して売却できるという点も大きなメリットだと言えるでしょう。
土地の測量が必要ない
境界が不明瞭な土地であっても、買取の場合は土地を売主側で測量する必要はありません。
仲介で売却する場合、売却後のトラブルを防ぐため、隣地との境界が不明瞭であれば隣地所有者立ち会いのもと確定測量を行うことが一般的です。
確定測量には2ヶ月〜3ヶ月程度の時間がかかり、数十万円以上の費用も必要です。
ですが、買取の場合は買主である不動産会社が測量を行うので、売主が測量を行う必要がなく、時間とお金をかけずに済むという点も買取のメリットでしょう。
条件が悪くても売却できる可能性がある
再建築不可の土地や瑕疵を抱えている土地など、条件が悪い土地であっても買取であれば仲介よりも売却できる可能性があるでしょう。
エンドユーザーに対して売却する仲介では、居住するための価値がなければ基本的に不動産を売却することはできません。
しかし、不動産会社はさまざまな土地の活用方法のノウハウを持っているので、条件が悪い土地でも売却できる可能性があります。
立地や形状が悪い土地や瑕疵を抱えている土地など、「売れないだろう」と思い込んでいる土地でも買取であれば売却できる可能性はあるので、まずは不動産会社に相談してみるとよいでしょう。
買取の4つのデメリット
買取は素早く簡単に現金化できる一方、次の4つのデメリットもあるので注意が必要です。
買取によって土地を売却する前に、4つのデメリットについてもしっかりと押さえておきましょう。
仲介よりも価格が安くなる
買取最大のデメリットが、仲介よりも価格が安くなるという点です。
不動産会社は仕入れのために土地を購入し、仕入れ値よりも高い値段で転売することを生業としています。
そのため、市場価格よりも安い値でしか売却することができません。
一般的に、買取の場合は市場価格の7割〜8割程度の価格が売価になります。
すぐに現金化できるというメリットはありますが、「少しでも高い値段で売却したい」という人には買取は不向きです。
悪徳業者も混在している
不動産会社の中には悪徳業者も混在しています。
悪徳業者は名義の勝手な書き換えや測量代詐欺などの手法で、不法に土地を取得しようとしたり金銭を要求することが多いので注意が必要です。
悪徳業者は登記を勝手に変更し、そうすると売却額も入ってこなければ、不動産の所有権も失うことになってしまいます。
また、買い手が見つかったからと測量代を要求する測量詐欺業者も存在します。
このような悪徳業者を避けるためにも、不動産会社選びは慎重に行い、信頼できる業者へ買取の相談しましょう。
売主が不利な条件になることも
買取では仲介と異なり、売主は買主である不動産会社に対して立場が弱くなります。
仲介の際には不動産会社は依頼主である売主の味方になり、売主有利の交渉をしてくれます。
しかし、買取の場合には不動産会社と直接の取引になるため、売主を守ってくれることはありません。
仲介では価格面などで売主の希望が通ることもありますが、買取では売主の希望は非常に通りにくく売主が不利な条件での売買になりがちです。
誰が所有するのか分からない
買取で売却した後は、ゆくゆく不動産会社は他の人へ転売するため、最終的に誰がその土地の所有者になるのかは分かりません。
近隣住民からすると「安心できる人であってほしい」と思うものですが、買取の場合にはその不動産会社からどのような人が購入するのは売却時には決まっていません。
売主としても「大切に土地を使ってくれる人へ売却したい」と思うものですが、買取の場合には売却後その土地に誰が住むのか、ましてや売却後にその土地がどうなるのかも分からないため、売主にとっても近隣住民にとっても仲介よりは不確実性が残ります。
買取に向いている人はこんな人
仲介よりも買取に向いている人は次のような人です。
- 早く現金を必要としている人
- 条件が悪い土地を売却したい人
- 瑕疵を抱えている土地を売却したい人
上記いずれかに該当する場合には仲介よりも買取が向いているでしょう。
買取での売却に向いている人の3つの特徴について詳しく解説していきます。
早く現金を必要としている人
買取は仲介と比較して圧倒的に不動産の現金化までに時間がかかりません。
早ければ数日程度で現金化できる場合もあるので、「とにかく早く現金が必要」という方は買取を利用するようにしてください。
仲介の場合は数ヶ月の時間がかかってしまうのでおすすめできません。
条件が悪い土地を売却したい人
売りたい土地の条件が悪い場合も買取の方がよいでしょう。
不整形の土地や再建築不可の土地などは、一般のエンドユーザーにはほとんどニーズがありません。
そのため、そのような条件の悪い土地を仲介で売却することは困難です。
土地の活用方法に長けた不動産会社であれば、条件の悪い土地であっても活用できる方法を知っています
仲介では売却できないような条件の悪い土地でも、プロである不動産会社に対してなら売却することが可能です。
瑕疵を抱えている土地を売却したい人
瑕疵を抱えた土地を売却したい人も買取の方がよいでしょう。
不動産における瑕疵には次の4つの種類があります。
物理的瑕疵 | 土壌汚染や地中障害物、コンクリート擁壁の破損などがある土地 |
法律的瑕疵 | 埋蔵文化財包蔵地に指定されている、建築基準法上の道路に接道していない |
心理的瑕疵 | 建物で自殺があった、土地で殺人事件が起きたなど |
環境的瑕疵 | 高圧線の鉄塔がある、近くに墓地がある |
このような瑕疵を抱えた土地は買い手が見つかりにくいのが現状です。
土地活用方法に長けた不動産会社であれば、このような瑕疵を抱えた土地の活用法も熟知しているので、買い取ってくれる可能性があるでしょう。
少しでも高く土地を買い取ってもらう4つのポイント
買取で少しでも高く土地を買い取ってもらうためには次の4つのポイントを押さえましょう。
土地を高く買い取ってもらうための4つのポイントについて詳しく解説していきます。
買取保証を利用する
仲介と買取のいいとこ取りをしたいのであれば買取保証制度を利用しましょう。
買取保証制度とは、最初は仲介で不動産会社に買い手を探してもらい、その後一定期間買い手が見つからなかった場合、不動産会社に買い取ってもらうことができる仕組みです。
この制度を利用すれば必ず期間内に資金化することができ、仲介によって買い手が見つかれば高値で売却することができます。
時間にある程度余裕があるのであれば、最初から買取を依頼するのではなく、買取保証制度を活用すると良いでしょう。
即時買取は価格が安くなる
不動産会社にすぐに土地の買取を依頼できる即時買取制度は価格が安くなるのがデメリットです。
そもそも買取は仲介よりも売却価格が安くなるものですし、最初から買取を希望すると「お金に困っているんだな」と判断されて足元を見られてしまう可能性があります。
最初から即時買取を希望することを極力避けるためにも、不動産の売却は時間的な余裕を持って手続きしましょう。
事前に相場を把握する
相場よりも著しく安い値段で買取をしようとする悪徳業者も不動産会社の中には多数存在します。
そのため、事前に周辺不動産の相場を把握しておきましょう。
不動産会社が提示した査定額が周辺の不動産相場から考慮して著しく安い場合には、その不動産会社に売却することについては慎重に検討した方がよいでしょう。
また、相場を把握した上で複数の不動産会社から査定を受けることで、どの不動産会社が適正価格で査定しているかということも把握できます。
土地総合情報システムを利用しよう
土地の売却相場を把握する簡単な方法が、「土地総合情報システム」を利用することです。
土地総合情報システムとは、国土交通省が公開している不動産の取引価格、地価公示・都道府県地価調査の価格をWEB上で調べることができるサービスです。
基準地価だけでなく実際に行われた取引価格を調べることができるので、実際の売買相場まで簡単に把握することができます。
自宅のPCやスマホからアクセスして調べることができるので、不動産会社に依頼する前にまずは土地の取引相場を把握しましょう。
複数の不動産会社へ査定を依頼する
複数の不動産会社へ査定を依頼することは非常に重要です。
不動産の買取を行う業者の中には、著しく低い価格で買い叩く業者も多数存在します。
そのような悪徳業者と取引をしないためにも、複数の不動産会社へ査定を依頼しましょう。
WEB上の一括査定サービスを利用すれば、非常に簡単に複数の不動産会社から査定を得ることができます。
売主が弱い立場になりがちな買取においては不動産会社を比較することが非常に重要になるので、必ず複数の会社から見積もりをとるようにしましょう。
繁忙期を狙って相談する
不動産会社にとって、転勤や転居などで人が動く1月〜3月くらいが繁忙期です。
繁忙期は不動産を欲する人が増えるので、不動産会社も仕入れである買取を活発化させる傾向にあります。
閑散期よりもこのような繁忙期の方が「多少多くのお金を支払ってでも不動産を仕入れたい」と考えるため、高く売りやすくなります。
少しでも高く売りたい場合には、繁忙期を狙って不動産を売りに出しましょう。
まとめ
買取とは不動産会社に直接不動産を買い取ってもらう方法です。
土地の売却では、測量がされていない場合、一般的に測量をしないと売却することはできませんが、買取であれば未測量のまま売却することも可能です。
また、不整形な土地や再建築不可などの条件の悪い土地は仲介での売却が極めて困難ですが、不動産会社の買取であればスムーズに売却することができます。
ただし、買取は仲介と比較して売却価格が安くなってしまうのが大きなデメリットです。
買取にするか仲介にするのかは両者の特徴や違いをしっかりと把握した上で、自分にとって最適な方法を選択しましょう。
また、買取で売却するのであれば、買取保証制度を利用したり、複数の不動産会社へ査定を依頼することも忘れないようにしてください。