マンションの平均寿命は68年と言われています。
マンションによって寿命は異なるものですが、老朽化したマンションに居住を続けることにはさまざまなリスクが伴うので、居住を継続する気がないのであれば早期の売却を検討した方がよいでしょう。
しかし「老朽化したマンションは買い手が見つからず売却することができない」と考えている人も多いのではないでしょうか?
老朽化したマンションでも、適切な方法で売却することによって買い手が見つかる場合もあります。
この記事では老朽化したマンションのリスクや対策、売却方法について詳しく解説していきます。
老朽化したマンションで発生する7つの問題点
老朽化したマンションでは、生活する上で次のような問題点が生じる可能性があります。
建物の劣化や設備の不具合、耐震基準を満たしていないことなどは、場合によっては命を脅かすリスクにもつながります。
老朽化したマンションで発生する7つのリスクについて詳しく解説していきます。
建物の劣化
マンションの老朽化で最も大きなリスクは建物の劣化です。
- 屋上
- 塔屋
- 廊下
- 階段等
- 鉄部塗装
- バルコニー
建物が劣化すると、上記の箇所のありとあらゆる部分でひび割れやサビ、浸水、侵食などが起こります。
当然ながら劣化していくと強度が落ちていくので安全上に問題がありますし、安全面だけでなく見た目も悪くなるので居住空間として快適とは言えないでしょう。
さらに1つの劣化は更なる劣化を生む原因になるので、どこかが劣化したマンションはより建物の劣化が激しくなってしまいます。
また、機能面での劣化だけでなく、マンション自体が社会的に価値を成さない「社会的劣化」という劣化もあります。
社会的劣化とは、要するにマンションが時代に合わないものになっているということです。
例えば、5階建てのマンションなのにエレベーターがない場合、高齢者はそのようなマンションで生活することは非常に困難です。
現代のライフスタイルに合わない建物になっている社会的劣化も経年によって起こり得る劣化症状の1つでしょう。
設備の不具合
建物の設備も老朽化によって不具合を生じる可能性があります。
- 照明
- 重合ポスト
- 給水管
- 排水管
- ガス設備
- 電気設備
- エレベーター
- インターホン
簡単に交換できるものも多いですが、設備の劣化を放置することによって建物そのものの劣化をさらに深刻化させるケースも考えられます。
例えば、給水管などの劣化を放置した場合には、そこから漏水が起きて建物全体が浸水してしまうことは珍しくありません。
経年劣化によって、共用部分や専有部分の設備の劣化も老朽化したマンションで生じる大きな問題点の1つです。
管理費と修繕積立金の増加
建物が古くなれば、修繕にかかる支出も大きくなります。
また、修繕積立金が上がると管理費も上がっていくのが一般的です。
管理費と修繕積立金が高すぎる物件は、居住者が費用の負担に耐えきれず離れていってしまう傾向があり、そのような物件では新規居住者も見つかりづらいです。
世帯数が少ないと管理費や修繕積立金がその分集まらないため、さらに管理費などが高くなるという悪循環に陥ってしまう可能性があります。
「旧耐震基準」による安全面の不安
古いマンションは1981年以前の「旧耐震基準」に基づいて建設されている可能性が高いです。
「旧耐震基準」は震度5強程度の揺れまでしか耐えることができない設計です。
近年では震度5強を超えるような地震が日本各地で頻発しています。
旧耐震基準で建築されたマンションは大きな地震が来た時の安全性が懸念されるという点は、非常に大きなリスクです。
空室が増えて治安の悪化やスラム化
老朽化したマンションは、安全性、景観、管理費修繕積立金の増大などの観点から空室が増えていくものです。
空室が増えたマンションは管理費や修繕積立金が不足し、管理や修繕計画が機能しなくなると言われています。
一般的に空室率が30%を超えると、管理や修繕が機能しないスラム化が始まると言われており、建物の劣化は加速度的に進んでいきます。
さらに空室が多い物件は治安も悪化する懸念があり、それでもマンションを所有している限りはそこに住み続けなければなりません。
資産価値の下落
老朽化したマンションは資産価値もどんどん下落していきます。
マンションの場合、築10年を過ぎると資産価値が実に3分の2以下まで下落してしまいます。
老朽化したタイミングで売却しようとしても、非常に安価でしか売却できないか、そもそも買い手が見つからないこともあります。
特に築30年を過ぎたマンションでは、定期的に丁寧なメンテナンスをしない限りはマンションの価値を保つことは実質的に不可能です。
管理組合が機能しない
老朽化したマンションでは管理組合が機能しないこともよくあります。
組合のメンバーが不足していたり、管理費が不足しているなどの理由で、少しずつ管理体制が曖昧になっていきます。
次第には管理組合が有名無実のものとなり、管理組合が全く機能しないことも珍しくありません。
やはり、このようなマンションは劣化が加速度的に進んでしまう悪循環に陥ります。
老朽化したマンションの活用法
老朽化したマンションは次の3つの方法で活用することができます。
大規模修繕を行う
思い切って大規模なリフォームを行うことでマンションの価値を復活させることが可能です。
- 耐震補強工事
- 設備の大幅リニューアル
- 外壁の塗装
不具合が起きた箇所を少しずつ修繕していくよりも大規模な修繕を施した方が資産価値の維持にはよほど効果的です。
ただし、入居者が減少して修繕積立金が足りない場合、各マンションの所有者が不足分を出し合うことになるか、大規模修繕を行うことはできなくなります。
解体して建て替える
解体してマンションを建て替える方法です。
住民の80%以上の同意があればマンションを建て替えることができます。
建て替えの原資は修繕積立金ですが、修繕積立金だけでは足りない可能性が高いので、不足分については以下の方法で調達します。
- 住民で出し合う
- 建て替えの際に部屋数を増やして売却益を充てる
容積率に余裕があれば高層マンションに建て替えることも可能なので、分譲の部屋数を増やして販売することによって利益を出すことも可能です。
しかし、実際建て替えを行うには住民がマンションを建て替えている間に仮住まいに引っ越さなければならないのでハードルが高く、老朽化したマンションの建て替えはほとんど事例がありません。
解体して土地を売却する
最後の方法が、解体して土地を売却する方法です。
この方法も住民の80%以上の同意があれば実施することができます。
住民が少なくなり、管理費などの増大に耐えられないようなケースでは、思い切って解体して売ることを選択するのも1つの方法でしょう。
解体して更地にすれば売却することができますし、立地によっては高額で売却できる可能性もあります。
老朽化して住民が少なくなったマンションにおいて、居住者の80%以上の同意が得られるのであれば、不動産会社と相談した上でこの方法を検討するのも良いでしょう。
老朽化したマンションを売却する3つの方法
マンションを解体したり建て替えたりすることは住民の80%以上の同意が必要になるので容易ではありません。
そのため、老朽化したマンションはそのまま中古マンションとして売却するのが最も簡単な方法です。
老朽化したマンションは次の3つの方法で売却することができます。
マンションが立地する場所や買い手の探し方によっては比較的簡単に売却できる可能性もあります。
老朽化したマンションを売却する3つの方法について詳しく見ていきましょう。
高齢者には中古マンションのニーズもある
中古マンションは高齢者のニーズが意外にもあると言われています。
バリアフリー改修を施して売却すれば、それほど長期で利用することを考えていない高齢者へ売却できる可能性があります。
立地や価格などにも左右されるので、不動産会社とよく相談した上で高齢者向けにリフォームすることなどを検討しましょう。
首都圏であれば古くても売却できる
首都圏の好立地であれば古いマンションでも若者へ売却できる可能性があります。
古いマンションをリノベーションして居住することは、「 ヴィンテージマンション 」と呼ばれ、若者の間で人気です。
東京23区内の中でも都心部であれば、築年数が古い物件でも価格次第ではすぐに売却できる可能性があります。
また、築年数が古いマンションであっても好立地であれば市場価格はそれほど下落しない点も、購入者のニーズが高い理由の1つです。
不動産会社による買い取り
老朽化したマンションを不動産会社に買い取ってもらう方法で売却できる可能性があります。
買取とは、不動産会社に直接買い取ってもらう方法です。
不動産会社が、リノベーションすれば売却できるなどと判断した場合は買い取りしてもらうことができますが、あくまでも不動産会社にとっては仕入れて再販売することが目的なので、仲介で売却する場合の7割〜8割程度の価格が買取価格になることがデメリットです。
しかし、不動産会社による買い取りでは、確実に早期で売却できるため「急いで売却したい」という方に向いています。
老朽化したマンションの売却額を引き上げる方法
老朽化したマンションは売却できたしてもそれほどの高値を期待することはできません。
少しでも売却額を引き上げるためには次の3つのポイントを意識して売却活動を行うとよいでしょう。
故障箇所を修繕して売却する
故障している箇所があるのであれば修繕してから売却しましょう。
故障したまま売却するよりは売りやすくなる可能性があります。
あくまで修繕する箇所は故障や不具合を起こしている部分だけで問題ありません。
築30年以上のマンションの購入を検討する人の多くが、購入後に大規模なリノベーションを希望しています。
そのため、壁紙の張り替えなどのリフォームをしてから売却しても、大規模なリノベーションを希望する人にとっては意味がありません。
それではリフォーム代金の無駄になってしまうだけなので、住宅の機能を損なうような故障箇所だけを修繕すれば十分でしょう。
ハウスクリーニングを行なって売却する
事前にハウスククリーニングを実施した上で売却することで売値が高額になることがあります。
マンションの購入希望者は購入前に内見に来るものですが、この際に汚れているマンションとハウスクリーニング済のマンションでは印象が180度異なります。
当然ながらハウスクリーニング済のマンションの方が売りやすいことは間違いありません。
マンションを売りに出す前にはハウスクリーニングをした方がよいでしょう。
退去後に売却する
売りに出す前に、マンションを退去した方が売りやすくなると言われています。
中古マンションの購入希望者にとっては、退去前の家具が残っている状態よりも退去後の部屋に何もない状態の方が購入後の生活を想像しやすくなります。
また、大規模なリノベーションを計画している人も、部屋に何もない方がリノベーションのイメージを掴みやすくなるのもメリットです。
買い先行でマンションの売却を進めた方が、より有利な条件で買い手を探すことができます。
老朽化したマンションを売却する際の相談先
老朽化したマンションを売却する際には以下の相談先を活用するのがおすすめです。
それぞれの特徴や注意点について詳しく解説していきます。
地元の不動産会社
老朽化したマンションは地元の不動産会社へ売却の相談をすることによって、柔軟に買い手を見つけてくれる場合があります。
地元の不動産会社は、高齢者などのインターネットを見ない層のニーズを把握している場合があるためです。
比較的割安な中古マンションを高齢者が終の住処として探しているケースは多々あります。
このようなニーズは大手不動産会社よりも地元の不動産会社の方が持っていますし、地元のデザイナーや建築士と連携してリノベーション物件として販売しているケースもあります。
地元で信用できる不動産会社があるのであれば、まずは地元業者へ相談してみましょう。
大手不動産会社
マンションが好立地に位置しているのであれば、抜群の販売ネットワークと発信力を持った大手不動産会社へ相談するのもよいでしょう。
大手不動産会社は発信力が強いので、好立地に位置しているお買い得な物件を探している現役世代に訴求力を発揮します。
地元の不動産会社とともに大手不動産会社にも相談してみると、幅広い層に対してマンション売却をアピールすることができます。
一括査定サイト
「どこの不動産会社へ相談したらいいか分からない」と、マンション売却の際に不安に感じている方も多いのではないでしょうか?
このような場合は、不動産一括査定サイトを利用するとよいでしょう。
一括査定サイトは、マンションの情報を一度入力するだけで複数の不動産会社から査定見積もりを得ることができるサイトです。
複数の不動産会社をまわる必要がなく、不動産会社ごとの査定価格を比較することができます。
また、不動産会社がこのような一括査定サイトに登録するためにはサイト運営側の厳しい条件をクリアしなければならないので、過去にトラブルがあった業者や悪徳業者などはサイトに加盟できないような仕組みになっています。
つまり、一括査定サイトに登録している業者は一定の条件をクリアした安全な業者のため、安心して取引することができるでしょう。
また、一括査定サイトを通じて査定見積もりをもらっても必ず売却をしないといけないわけではないため、安心して利用することができます。
まとめ
老朽化したマンションには次のようなリスクがあります。
このような不備を抱える物件からは入居者がどんどん減少し、管理費や修繕積立金が不足してさらに劣化が進んでいく悪循環に陥ってしまいます。
そのため、ある程度老朽化したマンションはどこかのタイミングで売りに出すのが一番です。
地元の不動産会社や大手不動産会社へ相談することで売却できる可能性がありますが、「数多くの不動産会社の査定を見てみたい」「どの不動産会社へ相談したらいいか分からない」という場合には、一括査定サイトの利用を検討してみましょう。
また、売却査定価格は不動産会社によって異なるものです。少しでも良い条件で売却するために、必ず複数の不動産会社に相談してください。