数年前からよく耳にするようになった「リースバック」。住んでいる家を売却した後も、家賃を払えばそのまま住み続けられるサービスの事をリースバックといいます。上手に活用すればとても便利な仕組みといえるでしょう。
この記事ではリースバックの仕組みやメリット・デメリット、利用において知っておくべきことなどの基礎知識をわかりやすく解説します。
リースバックとは?
リースバックとは、所有している不動産を第三者に売却した後、その不動産を購入した買主と賃貸借契約を結ぶことによって、元の所有者は毎月家賃を支払いながらこれまでと変わらず不動産を利用し続けることができるサービスになります。リースバックは主に、自宅の売却で活用される事が多いです。
何らかの諸事情により、まとまった資金が必要になることもあるでしょう。しかし資金調達するために自宅の売却を検討しても、住み慣れた自宅を手放すという決断は簡単なものではありません。そんな時、リースバックを活用すれば自宅にそのまま住み続けることができながら、まとまった売却資金を手に入れることができます。
リースバックの活用シーンとしては、以下のような場面で活用されることが多いです。
住宅ローンなどの借金の返済や、老後の生活費を確保したいという理由からリースバックが活用されるケースも多いですが、何らかの理由で急遽資金が必要になった場合にも、リースバックが活用されています。
また、リースバックは契約次第では将来自宅を買い戻すことが可能です。一時的に資金が必要だけど将来的には安定した収入が見込める場合などは、買い戻すことを視野に入れてリースバックを活用しても良いでしょう。
リースバックの手続きの流れ
まず、一般的なリースバックの流れは以下のようになります。
-
ステップ1仮査定
リースバックを扱っている不動産会社に連絡をして、物件の査定をしてもらいます。不動産会社から物件の買取価格と売却後の家賃が提示されます。
-
ステップ2物件の調査・査定
不動産会社が物件を訪問し、物件の詳細な調査と査定を行います。
-
ステップ3買取金額・家賃の提示
正式な買取金額と月々の家賃が提示されます。具体的な契約条件もしっかりと確認します。
-
ステップ4契約の締結
契約条件に同意すれば、売買契約と賃貸借契約を締結します。
-
ステップ5売買成立・賃貸開始
売買代金が支払われたら自宅の所有権は移転され、売買成立です。それと同時に賃貸借契約も開始されます。
-
ステップ6希望であれば物件の買い戻し
希望であれば、自宅を買い戻すことができます。資金の目処がつけば買い戻しを行い、また物件を所有することが可能です。
リースバックは専門の不動産会社が直接購入することがほとんどです。そのため、売却までに時間がかかることはありません。契約条件に納得ができれば半月~1ヶ月程度でリースバックを行うことができます。
リースバックの仕組み
リースバックはどのような仕組みで行われるのでしょうか。
以下から、リースバックの仕組みや知っておくべきことを3つに分けて解説します。
リースバックの買取価格
リースバックの買取価格は、不動産会社の仲介で売却する相場価格よりも6~8割程度低いのが一般的です。
購入者である不動産会社は、リースバックを行うにあたって毎月の賃料収入と将来売りに出したときに利益を得ることを目的としています。リースバックが通常の相場価格と比べて低い理由は、投資用不動産としての利回りを高くするためや、将来売りに出したときに利益を確保しやすくするためです。また、将来買い戻しに応じることもあるので自由に売却できない点や、賃貸借期間が終了したときに不動産市場の変動があった場合のリスク回避が理由となり、買取価格が低くなる傾向にあります。
しかし、不動産会社によって買取価格の設定方法は様々なので、複数の会社に査定依頼をして買取価格や条件を比較することをおすすめします。不動産一括査定を利用すれば、物件情報などを入力するだけで厳選された不動産会社が一斉に査定を行うので比較がしやすく、安心してリースバックを利用することができるでしょう。
リースバックの家賃
どうしても買取金額ばかりに目を向けがちですが、リースバックにおいては毎月支出することになる家賃の金額についても非常に重要な事項となります。
では、毎月支払う家賃はいくらくらいになるのでしょうか。
まず、リースバックにおける家賃は「期待利回り」によって決まります。期待利回りとは、不動産会社(購入者)がその不動産から期待する利益のことで、不動産の購入金額に対して1年間の家賃収入がどれくらいの割合であるかを示したものが「利回り」といいます。リースバックの期待利回りは、通常の投資不動産の期待利回りから2%~3%上乗せした家賃設定になることが多いです。
ここで注意が必要なのは、周辺の家賃相場は影響されません。なぜなら、入居者はすでに元の所有者と決まっているので家賃設定に周辺の家賃相場を参考にする必要がないからです。あくまで買取価格と期待利回りをもとに家賃を設定します。
家賃は期待利回りによって決まると先述しましたが、大まかなリースバックの期待利回りは6%~13%程度といわれています。期待利回りは物件の築年数やエリアによって異なり、不動産会社によって設定方法も異なります。
例えば、期待利回りが10%の場合は以下のような家賃設定になります。
リースバックは買取金額が高いほど家賃は高くなり、買取金額が安いほど家賃が低くなる仕組みになります。
AはBに比べて買取価格が高いですが、その分家賃も高く設定されています。なるべく家賃の負担を減らしたい場合、買取金額が最低限必要な資金額に達しているならBのように家賃の安さ重視で選択すると良いでしょう。毎月の賃料と買取金額のバランスや、必要になる資金を踏まえて、賃料と買取価格のどちらを重視したいかなども不動産会社に相談しましょう。
不動産会社によって買取価格や家賃の設定方法は様々なので、複数の会社に査定依頼をして条件を比較することをおすすめします。
希望であれば物件の買い戻しができる
リースバックでは、自宅を買い戻すことができます。何らかの事情により資金が必要になって行ったリースバックは、将来資金の目処がつけばまた自宅を所有することが可能です。ただし、不動産会社は買い戻しに必ず応じてくれるものではないので、買い戻しをしたいのであれば事前に不動産会社に伝え、契約書に買い戻し条件を明記しておくことが大切です。あとでトラブルにならないよう、買い戻す際の条件は契約時までにしっかりと話し合い、必ず書面にのこしておきましょう。
買い戻す際の注意点として、買い戻し価格は売却した価格よりも高くなるケースがほとんどです。一般的に、買い戻し価格は売却価格の1.1~1.3倍になります。
例えば、リースバックでの売却価格が2000万円の場合、買い戻し価格は2200万円~2600万円程度ということになります。買い戻し価格が売却価格より高くなる理由としては、不動産会社が購入時と売却時にかかる諸費用分と、会社によっては多少の利益分を上乗せしているからです。また、不動産会社によっては一定の期間内での買い戻し価格を契約時に提示してくれるところもあります。
将来の買い戻しを前提にリースバックを利用する際は、あらかじめ資金計画をしっかりと立てておきましょう。
リースバックのメリット
リースバックには多くのメリットがあります。
以下から、リースバックを利用するにあたってのメリットを5つご紹介していきます。
売却した後も同じ家に住み続けられる
これはリースバックにおいて最大の特徴であり、メリットとなります。
本来、自宅を売却すれば別の家に引っ越しをしなければならず、転居先探しや子供の転校手続きなどで精神的にも金銭的にも負担が増えてしまうものです。しかし、リースバックを利用すればそのまま住み続けることができるので、ライフスタイルを変えることなく自宅を売却することができます。
買取代金が一括で支払われる
自宅の買取代金は一括で支払われるため、まとまった現金を受け取ることができます。
また、リースバックは仲介での売却と違って不動産会社が直接買い取ることがほとんどのため、短期間で現金を手に入れることができます。すぐにまとまった資金が必要なときは最大のメリットとなるでしょう。
売却したことを周囲に知られない
一般的な仲介の売却では、買い手を見つけるためにインターネットやチラシなどで物件情報を公開します。しかしリースバックでは、不動産会社が直接買い取ることがほどんどなので、物件情報を公開することはありません。そのため、周囲に売却をしようとしていることを知られずに済みます。また、売却をした後も住み続けられるので、周囲は売却したことすら気づかないでしょう。
ランニングコストの支払いがなくなる
ランニングコストとは、不動産の所有者にかかる費用のことを指します。
不動産を所有すれば、固定資産税・都市計画税や、マンションであれば管理費・修繕積立金を支払わなければなりません。しかしリースバックを利用すれば所有者から賃借人に変わるため、これらの支払いがなくなります。
将来、買い戻すことができる
リースバックは自宅を売却することで利用できるシステムですが、将来的に自宅を買い戻すことも可能です。
例えば、一時的に資金が必要になってリースバックを利用した場合、いずれ資金に余裕ができればそのタイミングで買い戻すことができます。ただし不動産会社によっては買い戻しが不可であったり、買い戻しの際の条件がついている場合があるので、契約前にしっかりと条件を確認しておきましょう。
リースバックのデメリット
リースバックには多くのメリットがありましたが、デメリットも存在します。
デメリットもしっかりと理解した上でリースバックを利用しましょう。
以下から、リースバックのデメリットを4つご紹介します。
売却価格は相場よりも安くなることが多い
リースバックの場合、売却価格は通常で売買する価格よりも6~8割程度低くなる傾向にあります。
リースバックを行う不動産会社によって買取価格は変動しますが、通常の相場価格よりも低い額になってしまうことはデメリットといえるでしょう。
家賃設定が相場よりも高くなることが多い
リースバックの家賃の決め方は、一般的な家賃の設定方法とは異なります。
一般的な家賃設定は周辺相場をもとに決めますが、リースバックでは「期待利回り」で家賃を設定します。リースバックは通常の期待利回りから2~3%程度上乗せした賃料で設定することが多いため、周辺相場の家賃よりも高くなる傾向にあります。
売却価格が高ければ高いほど、家賃も高くなる仕組みです。家賃の負担を少しでも減らしたい場合は、売却価格を減額することで調整できることもあるので、不動産会社に相談してみましょう。
ずっと住み続けられる保証はない
自宅を売却したあとでも住み続けられるのがリースバック最大のメリットです。ですが、不動産会社によっては、契約の条件に賃貸借契約期間を設定しているところもあるので注意が必要です。
リースバックの場合、将来的に物件を第三者に売却することを目的としている不動産会社もいます。そのような場合は賃貸借契約期間を設けるため、その期間内で退去しなければなりません。
リースバックを行う際は、賃貸借契約期間についてもしっかりと確認しましょう。
買い戻し価格は売却価格より高い可能性がある
リースバックには、自宅を買い戻すことができるメリットがあります。しかし、買い戻し金額は売却価格よりも高くなるケースがほどんどです。
不動産会社は、購入時と売却時の諸費用と多少の利益分を上乗せするため、売却価格よりも買い戻し価格の方が高くなりやすい傾向にあります。一般的に、買い戻し価格は売却価格の1.1%~1.3倍になります。
買い戻しを視野に入れていれば、あらかじめ資金計画をしっかりと立てておきましょう。
リースバックのよくある質問
こちらでは、リースバックに関するよくある質問にお答えします。
リースバックの査定は費用がかかる?
基本的に、リースバックの査定は無料で行っているところがほとんどです。
住宅ローンが残っていてもリースバックできる?
住宅ローンが残っていてもリースバックを利用できます。ただし、売却価格が住宅ローンの残債額を上回っていなければ利用することは難しいです。売却するには「抵当権」を抹消する必要があり、抵当権を抹消するには住宅ローンを完済しなければなりません。査定を依頼する際は、住宅ローンの残債額を確認しておきましょう。
リースバックとリバースモーゲージの違いは?
リースバックは不動産を売却してその資金を受け取り、売却後は賃貸で引き続きその不動産を利用することができる仕組みです。
一方、リバースモーゲージは自宅を担保に資金を借りるローンになります。契約者の死亡後に自宅を売却し、その売却代金からローンを一括返済する仕組みです。
自宅以外の不動産もリースバックできる?
自宅以外でも、オフィスビルや事務所などでもリースバックを利用することが可能です。
ただし、不動産会社によって異なるので確認しましょう。
まとめ
いかがでしたか?
リースバックは資金調達の一つとして有効な手段ですが、デメリットも踏まえた上で本当にリースバックが最適な方法かどうかをしっかりと判断する必要があります。
リースバックの買取金額や家賃は不動産会社によって異なります。また、不動産会社によっては賃貸借契約期間を設定している場合や買い戻しをNGとしている不動産会社も存在しています。
そのため、まずは複数の不動産会社に査定を依頼して条件を比較することをおすすめします。
不動産一括査定サイトを利用すれば複数の不動産会社に一括で査定をしてもらえるので、買取価格や家賃・契約条件を簡単に比較することができ、一番良い条件でリースバックできる会社をみつけることができるでしょう。