建物が老朽化して入居者が減っていき、建物を維持管理する事が出来なくなったマンションを限界マンションといいます。
限界マンションになってしまうと、売却することや建て替えることが非常に難しくなり、居住を続けるしかなくなってしまう可能性があります。
限界マンションが誕生する理由や、所有するマンションが限界マンションにならないための対処法、処分方法などについて詳しく解説していきます。
限界マンションとは何?
限界マンションとは、様々な要因によって建物を維持管理する事が限界になったマンションのことです。
具体的には次のようなマンションを指します。
具体的に限界マンションとはどのようなマンションか、また限界マンションと築年数の関係性について詳しく見ていきましょう。
建物自体が寿命を迎えたマンション
建物自体が寿命を迎えたマンションを限界マンションといいます。
もはや修繕をしたとしても建物の耐久性が維持できるわけではなく、将来的には取り壊すしかない状態のマンションが限界マンションです。
RC造マンションの耐用年数は47年ですが、しっかりとメンテナンスをしていれば100年以上の寿命があると言われています。
反対に、正しくメンテナンスをしなければ50年程度で修繕しても手遅れなほどの状態になってしまうので、正しいタイミングで必要な修繕を怠ったことによって早期に限界マンションとなってしまう可能性があります。
つまり、築年数が古いからといって必ずしも限界マンションになるわけではありません。
スラム化したマンション
スラム化したマンションも限界マンションといいます。
退去者が続出し、空き部屋が増えたマンションは、管理が行き届かないどころか清掃もままならなくなりどんどんスラム化していきます。
そうなると建物の劣化も早くなり場合によっては治安も悪化し、スラム化したマンション=限界マンションとなってしまいます。
管理費や修繕積立金が確保できないマンション
管理費や修繕積立金が確保できないマンションも限界マンションになる可能性が非常に高くなります。
管理費が足りなければ清掃業者などを入れることはできませんし、修繕積立金が不足すると大規模修繕をすることができません。
不足した管理費や修繕積立金を他の居住者が負担することで管理や修繕を規定通りに行うことはできますが、一般的に他の住人が滞納した管理費や修繕費を補填することについて住民の同意を得ることは困難です。
そのため、結果的に管理や修繕が不可能となり、建物は劣化していきます。
劣化が進めばさらに修繕費用が高くつき、修繕することがより難しくなります。
このように、初期段階で資金不足によって修繕や管理ができないと、年数が経過するにつれてさらに修繕や管理が難しくなり悪循環に陥ります。
住民が決められた管理費や修繕積立金をしっかりと支払っていないことによって、限界マンションになる可能性があります。
築年数との関連性は?
1970年代に建築されたマンションは劣化して限界マンションになってしまう可能性があります。
1970年代はマンションの建築ブームでコンクリートの材料である川砂が不足するという事態が起きていました。
不足した川砂の代わりに海砂を使用していたことがあり、このようなマンションは川砂を使ったコンクリートよりも劣化が早くなると言われています。
また、1970年代は修繕積立金を集めていないマンションも多く、定期的に修繕がなされていないケースも少なくないようです。
このようなマンションはコンクリートの質や修繕を実施していないことを原因として劣化が早く進むケースが多いようです。
反対に川砂のコンクリートで建築されたマンションで、定期的に修繕がなされているのであれば築100年超でも限界マンションにならないこともあります。
築年数とは必ずしも関係なく、修繕の実地状況やコンクリートの質の問題の方が限界マンションが誕生する原因として大きいと言えるでしょう。
限界マンションができる原因
限界マンションはなぜ誕生してしまうのでしょうか?
建物は年数が経過すれば劣化しますが、しっかりとメンテナンスをすれば鉄筋コンクリートの場合は100年以上保つと言われています。
にもかかわらず限界マンションが誕生する背景には次の4つの理由があります。
限界マンションが誕生する4つの原因について詳しく見ていきましょう。
入居者の高齢化
入居者の高齢化は限界マンション化する大きな原因です。
高齢化した入居者は高額な修繕費などを支払ってまで修繕をしたいとは考えていません。
高齢者は「余命の何年かだけ住むことができればいい」と考えている人が多いため、そうすると大規模修繕や建て替えの計画が進みにくくなってしまいます。
高齢の入居者が多いと、マンションの管理や修繕が疎かになり劣化は加速度的に進んでいきます。
空室率の増加
空室率が増加しているのも限界マンションになる原因の1つです。
建物の空室率が増加すると、管理や修繕が行き届かなくなります。
また、入居者が減少すると管理費や修繕積立金がその分不足するので、金銭的に管理や修繕ができなくなります。
入居者の減少しているマンションに居住している方は「限界マンションになる可能性がある」と理解しておいた方がよいでしょう。
管理費や修繕積立金の未払い
管理費や修繕積立金を計画通りに支払わない入居者が多い場合にはマンションの清掃や修繕ができなくなり、建物は劣化していきます。
管理費や修繕積立金が未払いになっている入居者の分を代わりに他の入居者が支払うという選択肢もありますが、多くの場合、未納者の負担を背負うことについて入居者の同意を得ることはできません。
入居者の一部が管理費や修繕積立金の支払いを怠ると、マンションの管理や修繕ができなくなっていき限界マンションとなってしまいます。
投資家の管理放棄
投資家が管理を放棄した部屋が多いと限界マンションになる可能性があります。
投資家は自身が居住している住まいではないことから、必要な管理を放棄しがちです。
特に外国人投資家の中には管理費や修繕積立金を支払っていないケースも多いので、いざ大規模修繕の時期を迎えた時に必要な費用が足りず、大規模修繕を行うことが不可能となりマンションの劣化が進むことがあります。
限界マンションが誕生する流れ
限界マンションが誕生する流れは大まかに次の通りです。
経年劣化によって入居者が減少し、やがて管理する人がいなくなり、住民の質が低下して建て替えも不可能になるという流れです。
限界マンションが誕生する流れについて詳しく見ていきましょう。
経年によってマンションが劣化
まず、経年によってマンションが劣化します。
築20年くらいまでは、管理費・修繕積立金をしっかり支払う入居者が多く、空室もそれほどないので管理組合が機能し、修繕計画も予定通り実施することができます。
しかし築年数の経過とともに建物の傷みは大きくなり、大規模な修繕が必要になっていきます。
入居者が減少する
経年とともに建物が劣化していく上、築年数が経つにつれ修繕積立金の額が大きくなるので、古くなった建物からは入居者が減少していきます。
入居者が減少することによって、管理費や修繕積立金を必要額まで集めることが難しくなります。
管理組合運営の機能不全
管理費が集まらない、入居者が少ないなどの理由で、徐々にマンションの管理組合が機能不全に陥っていきます。
例えば、建物の配管や電気系統や躯体部分などに不具合があったとしても、管理組合が機能していなければ修繕計画を立てる事はできないため、マンションの劣化はさらに早まります。
区分所有等に関する法律によって建て替えができない
劣化して限界マンションになった建物は建て替えなければなりません。
しかし、マンションを建て替えるには区分所有等に関する法律に則って「居住者の5分の4以上の賛成」を得る必要があります。
建て替えをする場合には、引越し費用も建て替え費用も住民が負担しなければなりません。
居住者全員に経済的余裕があり、年齢的にも若く、今後もそのマンションに居住し続ける意思があるのであれば建て替えに応じるかもしれません。
しかし、限界マンションの居住者は高齢で経済的にもそれほど余裕がない人が多いのが実情です。
そのなかで居住者の5分の4もの賛成を獲得することは実質的に不可能です。
そのため、やがて行政や新たに買い取ったディベロッパーが立ち退きをして取り壊すまで、限界マンションはその場所に存在し続けることになります。
限界マンションを購入するメリットとは?
限界マンションは建て替えや売却が非常に難しいというデメリットがあるものの、購入希望者にとっては次のようなメリットがあります。
限界マンションを上手に活用できるのであればむしろお買い得だという側面もあります。
限界マンションを購入する3つのメリットについて詳しく見ていきましょう。
立地がよい
限界マンションは40年以上前に建築された建物であることが一般的です。
築40年以上の古いマンションは好立地に所在していることが多いため、通常であれば市場価値の高い所在地に限界マンションが存在している可能性があります。
限界マンションであれば、好立地なのに低価格で購入できるのがメリットです。
価格が安い
限界マンションは価格が安いのも非常に大きなメリットです。
周辺の同規模の物件と比較して半値以下の価格で購入できることも少なくありません。
周辺の相場価格よりも安い値段で物件を購入できるのは大きなメリットでしょう。
間取りが広い
古いマンションは地域の開発が進む前に建築されたものであることがほとんどです。
そのため、近年のマンションよりも間取りが広く造られていることが多いです。
広い物件を安く購入し、自分で好きなようにリノベーションすることも限界マンションなら実現できます。
限界マンション化を避けるためのポイント
保有しているもしくは購入予定のマンションが限界マンションにならないために、次のポイントを押さえておきましょう。
限界マンションにならないための4つのポイントを解説していきます。
立地がよい物件を選択する
これから中古マンションを購入するのであれば、立地がよい物件を選択しましょう。
都心の一等地、郊外の駅近などの物件は人気があるので、退去者が出てもすぐに新たな入居者で埋まるという新陳代謝が起きやすくなります。
そのような物件は入居者の平均年齢が若くなるので、マンションがスラム化する可能性は低いでしょう。
将来計画を確認する
マンションの将来計画を確認しましょう。
そのマンションはいつ大規模修繕を行うの予定なのか、どの程度の築年数で建て替えなどを検討しているのかなど、将来像がしっかりと描かれているマンションは管理がスムーズに行き届き劣化を防ぐことができます。
また、老朽化しても大規模修繕や建て替えの計画があれば、限界マンションのまま放置されるリスクは低いでしょう。
建て替えや買い替えを検討する
すでにマンションが限界マンション化しているのであれば、建て替えや買い替えを検討しましょう。
住民の5分の4の賛同を得られそうなのであれば、建て替えをすることで建物全体は蘇ります。
容積率に余裕があるのであれば、戸数を増やし、分譲による売却益によって所有者の負担なしで建て替えができる可能性もあります。
建て替えが難しいのであれば、できる限り早めに売却して新しいマンションへ買い替えることを検討すべきでしょう。
都市計画法改正による取り組みを行う
原則としてマンションの建て替えは居住者の5分の4の賛同がなければ不可能です。
しかし、都市計画法改正によって、市街地再開発事業かつ自治体が承認する場合に限って、居住者の3分の2以上の賛成で建て替えができるようになっています。
マンションの建て替えが上記の対象になるのであれば、居住者の3分の2の同意で建て替えることができ一気にハードルが下がるので、対象であれば建物の建て替えを住民に提案してみるのもよいでしょう。
限界マンションの処分方法
限界マンションの建て替えや解体は基本的には難しいのが実情です。
それでも限界マンションから離れたいのであれば、賃貸物件として貸し出すか売却するかのいずれかの方法で処分するしかありません。
限界マンションを処分する2つの方法を解説していきます。
賃貸物件として貸し出す
限界マンションを賃貸物件として貸し出す方法です。
限界マンションを所有することには抵抗を感じる人でも、家賃が安いのであれば賃貸したいという需要は存在します。
賃借人からすれば限界マンションは立地が良くて広いため、家賃が安ければ魅力的です。
限界マンションは賃貸物件として有効活用することができます。
売却する
「売れるうちに売ってしまう」というのも1つの方法です。
限界マンションは空室率と劣化が進むにつれて売りにくくなります。
そのため、できる限り早期に売却することが重要です。
限界マンションをどのように活用するのかについては購入者によって異なるため、顧客を抱えている不動産会社によって査定額も異なります。
限界マンションを売却する際には、一括査定サービスなどを利用して必ず複数の不動産会社から査定を得るようにしてください。
少しでも良い条件を提示した不動産会社に売却を依頼しましょう。
まとめ
限界マンションとは、建物が老朽化し、建物の維持管理が機能していないマンションを指します。
限界マンションは入居者の高齢化や入居率の減少によって、管理費・修繕積立金の未納などを原因として起こることです。
これからマンションを購入する方は、物件選びには十分注意するとともに、将来の修繕計画などをしっかりと確認することも重要です。
所有している物件が限界マンションになってしまった場合には、一刻も早く売却するのがベストです。一括査定サービスなどを利用して複数の不動産会社から査定を取り、一番条件の良い会社に売却を依頼しましょう。