「相続で所有することになった家を売却したい。」「今住んでいる家を売却して住み替えたい。」「住宅ローンが返済できないから家を売りたい」「離婚するので家を売りたい」など、普通に生活していると一見縁のないようにみえる家の売却ですが、このように人生の中には意外にも家の売却を検討する場面は多いものです。
しかし、いざ家を売却しようとすると「何から始めたらいいか分からない」「どこへ相談したらいいか分からない」などと不安を感じる人もいるのではないでしょうか?
不動産売却では、売却に対する知識がある程度必要になります。
こちらでは家の基礎知識から売却を成功させるコツまで徹底解説していきますので、家の売却を検討中の方は是非最後までご覧ください。
家を売却する方法は3つある
家を売却するには次の3つの方法があります。
このうち、仲介と買取が不動産会社を通じて家を売却する方法で、自己発見取引とは売主自ら買い手を探す方法です。
家を売却する3つの方法の特徴やそれぞれの違い、メリットとデメリットについて詳しく解説していきます。
仲介
仲介とは、不動産会社に買い手を探してもらい売却する方法です。家の売却では仲介での売却がスタンダードな方法といえます。
仲介によって家を売却する際には、不動産会社と「媒介契約」という契約を締結し、売却が成功した際には不動産会社へ仲介手数料を支払います。
不動産会社のネットワークを使って買い手を探してもらうことができるので、売主自ら買い手を探すよりも売却できる可能性が高くなりますし、売買交渉の間に不動産会社が入ってくれるのでトラブルの心配がなく安心です。
仲介のメリットとデメリットについてもしっかりと理解しておきましょう。
仲介で売却するメリット
仲介で売却するメリットは次の3つです。
仲介は不動産の購入を希望するエンドユーザーへ直接売却できるので、市場価格で売却することが可能です。そのため、不動産会社へ直接不動産を売る「買取」よりも高く売ることができるのが一般的です。
また、不動産会社の豊富なネットワークを使って様々な人へ売却のアプローチができるので、自分では「買い手が見つからない」と考えていたような物件でも売却に成功できる可能性があります。
買い手との交渉の際には不動産会社が間に入るので、悪質な買い手から詐欺や恐喝などの被害に遭うリスクを大きく低減することが可能です。
仲介で売却するデメリット
仲介で売却する際には次の3つのデメリットやリスクもあるので注意しましょう。
仲介で不動産を売却する際には不動産会社に対して仲介手数料を支払わなければなりません。
仲介手数料の上限額は宅地建物取引業法によって次のように決められています。
売却金額 | 仲介手数料 |
200万円以下の部分 | 売買価格の5%+消費税 |
200万円超400万円以下の部分 | 売買価格の4%+消費税 |
400万円超の部分 | 売買価格の3%+消費税 |
例えば、家を3,000万円で売却した場合の仲介手数料は次のようになります。
200万円×5%+200万円×4%+(3,000万円–400万円) ×3%+消費税=105.6万円
なお、上記のように家が400万円超の売却金額である場合には、『物件価格の3%+ 6万円+消費税』の計算式で算出することもできます。
家を3,000万円で売却すると仲介手数料だけで100万円以上の支出になるため、仲介での売却は金銭的なコストが大きくなってしまうのがデメリットといえるでしょう。
また、仲介では買い手を探すための時間が必要になるので、仲介で売却するには平均的に3ヶ月程度の時間がかかると言われています。なので「急いで売却したい」という方には仲介での売却は不向きです。
さらに仲介のデメリットとして、不動産会社の中には直接の買主に対してしか不動産を販売しようとしない「囲い込み」という行為をする業者も存在します。
「囲い込み」とは、不動産会社は自社の顧客や直接見つけた買主にだけ物件を販売して、売主と買主の双方から仲介手数料を得ることを目的として行うものですが、売主にとっては買主が限られてしまうだけなのでメリットがありません。
そのような悪徳な業者に売却を任せてしまうことがないよう、不動産一括査定サイトなどを活用して優良な不動産会社をみつけましょう。
買取
買取とは、不動産会社に直接不動産を買い取ってもらう方法です。
買取では、不動産会社は基本的に転売する目的で購入します。そのため、不動産会社が「買い取って転売すれば利益を出せる」と判断した不動産であれば比較的すぐに売却することが可能です。
買取によって家を売却するメリットとデメリットについて詳しく解説していきます。
買取で売却するメリット
買取で家を売るメリットは次の3点です。
買取は不動産会社へ直接不動産を売却することです。
つまり、仲介のように買い手を探す時間が必要ないので、早ければ1週間程度で家を売却して資金化できる可能性もあります。
また、買取は仲介ではないので仲介手数料がかかりません。売却に伴うコストを抑えることができる点も買取のメリットだと言えるでしょう。
さらに、広すぎる物件や古すぎる物件などは仲介ではなかなか売却することが困難ですが、そのような物件でも不動産会社の買取であれば売却することが可能です。仲介ではなかなか売却できないような物件でも買取であれば売れる可能性があるのもメリットだと言えるでしょう。
買取で売却するデメリット
買取で売却するデメリットは「売却価格が仲介よりも安くなる」という点に尽きます。
不動産会社にとって買取は「仕入れ」です。「安く仕入れて高く転売する」というのが不動産会社の商売ですので、一般的な買取価格は市場価格の7割〜8割程度の価格になります。
「少しでも高く売却したい」という方は、買取ではなくある程度の時間をかけて仲介で売却する方が良いでしょう。
自己発見取引
自己発見取引とは、売主が自ら買い手を探して売却する方法です。
不動産は、不動産会社を通さなくても合法的に売却することが可能です。
友人や知人、親戚などで家を買ってくれる人がいれば、わざわざ不動産会社を通さずに自分で売却することによって市場価格で売却できる上に高額な仲介手数料もかかりません。
また、最近はネット上で売りたい人と買いたい人をマッチングするサイトも増えているので、不特定多数の人に対して自己発見取引で不動産を売却することも可能です。
自己発見取引のメリット
自己発見取引のメリットは次の3点です。
自己発見取引は、仲介手数料がかかりません。また、直接エンドユーザーへ売却できるので市場価格で売ることも可能です。
上手く買い手さえ見つけることができれば、金銭的には最もメリットのある売却方法だと言えます。
また、売却価格は買い手との交渉で決めることができるので、お互いに同意さえすれば市場価格より高く売却することも安く売却することもできます。
不動産会社が間に入らないので、売り手と買い手双方の事情を勘案して比較的自由に売価を設定できるのもメリットです。
自己発見取引のデメリット
自己発見取引のデメリットは次の2点です。
自己発見取引では、そもそも買い手を見つけることそのものが非常に難しいのが実情です。
不動産会社であれば不動産業界のネットワークや販売力がありますが、自己発見取引では自分自身で家を買ってくれる人を見つけなければならないので、いつまでたっても買い手が現れない可能性があります。
また、買い手が見つかったとしても、ネット上などで出会った相手であれば地面師や反社会的勢力などが詐欺目的で近づいてきている可能性もあるので注意が必要です。
「所有権を移したのに代金が払われない」「不当な手数料を請求された」などの被害に遭う可能性も否定できません。
不動産会社が仲介に入っていればこのようなトラブルを避けることができるので、この点も自己発見取引のデメリットだと言えるでしょう。
もし自己発見取引で売却をするのであれば、相手が信頼できる人かどうかをしっかりと見極めてから取引を行ってください。
家は仲介で売却するのが基本
家は仲介によって売却するのが基本です。
一般の人が自己発見取引で売却先を見つけるのは非常に困難ですし、反社会的勢力と売買取引してしまう可能性があるなどの一定のリスクもあります。
また、買取の場合には売価が仲介よりも安くなってしまいます。
そのため、不動産売却のプロである不動産会社と媒介契約を締結し、売却先を見つけてもらう仲介での売却が一般的になります。
「不動産を売却したい」と考えた時には、あらかじめ知人や親戚などの信頼できる買主を見つけることができる場合以外は、仲介によって売却するようにしましょう。
なお、「どの不動産会社へ相談したら良いか分からない」という方は、一括査定サイトを利用することがおすすめです。
一括査定サイトとは、売却したい不動産の情報を入力するだけで、複数の不動産会社から査定をしてもらうことができるサービスです。
サイトに加盟している不動産会社はサイトの基準に合致した会社ですので、悪徳な不動産会社に引っかかってしまうリスクはありません。
いずれにせよ、「早急にお金が必要」「友人や親戚へ家を売却できる」というケース以外では、仲介によって不動産を売却することを基本としましょう。
家を売る流れ
仲介によって家を売却する流れは次のようになります。
仲介だからといって不動産会社に丸投げすればよいわけではなく、売却前や売却後も売主が自ら行わなければならないことが多数あります。
家を売る際、売主は何をすべきなのかという点について詳しく解説していきます。
①相場を把握する
不動産会社へ売却の相談をする前に「自分の家と同じような家が実際にいくらで売れているのか」という相場を把握しておくことが非常に重要です。
相場を把握しておかないと、不動産会社の査定が高いのか安いのかという判断ができないためです。
相場は、インターネット上で簡単に調べることが可能です。
国土交通省が運営する「土地総合情報システム」や、指定流通機構(REINS)が管理する「レインズマーケットインフォメーション」というサイトで、実際に売却された不動産の成約実績を閲覧することができます。
このような情報から「自分の家がいくらで売れそうか」ということをまずは把握してみましょう。
②不動産会社から査定を受ける
相場を把握したら、不動産会社から査定を受けましょう。
査定とは、不動産会社が家の広さや家の状態などを確認し、適正な売却価格がいくらなのかを調査して価格を算出することです。
査定には登記簿謄本などの情報から算出する「机上査定」と、実際に不動産会社が現地を確認して査定額を算出する「訪問査定」の2種類が存在します。
最初は机上査定を受け、だいたいの査定額を確認した後に訪問査定を受けるのが一般的です。
なお、不動産会社によって査定額は異なるものなので、できる限り多くの不動産会社から査定を受けましょう。
街の不動産屋さんへ相談するのももちろん良いですが、一括査定サイトを利用すれば複数の不動産会社から同時に査定を受けることができるのでおすすめです。
「どこの不動産会社へ相談したらよいか分からない」「いきなり不動産会社に訪問するのは抵抗感がある」という方も、まずは一括査定サービスを利用するのがよいでしょう。
③不動産会社と媒介契約を締結する
売却を任せたい不動産会社が決まったら、その不動産会社と媒介契約を締結します。
媒介契約とは、正式に不動産会社が仲介で買主を探す際に結ぶ契約の事です。
売主と不動産会社の間でのトラブルを防ぐために、不動産会社が行う業務の内容や仲介手数料の額などを明確にし、あらかじめ媒介契約書に記載しておきます。
媒介契約を締結すると、不動産会社は売主に対して次の4つの業務を行います。
なお、媒介契約には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3つの種類があり、それぞれの特徴は以下のようになります。
一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | |
複数の不動産会社へ依頼 | 可能 | 不可 | 不可 |
自分で買主をみつける行為 | 可能 | 可能 | 不可 |
媒介契約の期間 | 自由に決めて良い | 3ヶ月以内 | 3ヶ月以内 |
レインズへの登録義務 | なし | あり(媒介契約後7日以内) | あり(媒介契約後5日以内) |
売主への報告義務 | なし | 2週間に1回以上 | 1週間に1回以上 |
一般媒介契約では複数の不動産会社と媒介契約を結ぶことができますが、不動産会社は売却活動中の報告義務やレインズへの登録義務がありません。
一方、専属専任媒介契約では1社の不動産会社としか媒介契約を結べないうえに自分で買主をみつけることもできませんが、その分不動産会社の義務も厳しく設定されています。
信頼できる不動産会社が見つかれば、専任媒介契約もしくは専属専任媒介契約を結んで手厚く売却活動をしてもらう方法も良いですし、一般媒介契約にして複数の不動産会社を競わせることも1つの手です。
それぞれの媒介契約の詳細については、後記で詳しく解説します。
④売却活動
売却活動の際には最初に売出価格を決めます。
不動産売買においては売出価格からややディスカウントして売却するのが一般的ですので、売出価格は売却希望額の1割〜2割程度高い価格を設定するのが基本です。
売出価格が決定したら、いよいよ売却活動のスタートです。
不動産会社は、自社のホームページや加盟しているポータルサイト、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しているコンピューターネットワークシステム「レインズ(REINS)」などに物件の情報を掲載し、購入希望者を探します。
そのため、基本的に売却活動中は不動産会社が動いてくれることになります。
ただし、不動産会社に任せきりにするのではなく、住んでいる人でなければ分からない家のおすすめポイントなどのポジティブな情報は積極的に不動産会社へ提供しましょう。
また、不動産会社があなたの物件情報を掲載しているサイトを定期的に確認し、アップデートできる情報がないかも適宜チェックすると良いでしょう。
⑤売買契約・引き渡し
買主が見つかったら売買契約を締結し、買主へ不動産を引き渡します。
売買契約の際には不動産会社が売買契約書や重要事項説明書を作成し、契約の内容や条件などを売主と買主に説明します。
売買契約締結後に契約の内容を変更することは非常に困難なので、契約内容の説明を受けていて少しでも不明点があればその場で不動産会社に確認しましょう。
売買契約を締結したあとは、売買代金の支払いを受けるのと同時に家の引き渡しを行います。
基本的には代金決済と同時に所有権移転登記の書類を司法書士へ渡すことによって、引き渡しが完了することになります。
これらを同時に行うことによって、売主は確実に売買代金を受け取ることができ、買主は確実に不動産の名義を移転することができます。
⑥確定申告
不動産の売却によって譲渡所得が出た場合には確定申告が必要です。
譲渡所得は次のように計算します。
譲渡収入金額とは、土地・建物の売却代金、固定資産税・都市計画税の精算金などが該当します。
譲渡費用は不動産を売却するためにかかった経費で、以下のようなものが該当します。
取得費とは、土地・建物を購入したときにかかった費用のことで、次のいずれかの方法で計算します。
上記の計算式で所得が出た場合には、その譲渡所得について確定申告を行います。
仲介で家を売る際の媒介契約の種類
先述した通り、仲介で家を売却する際には不動産会社と媒介契約を締結しますが、媒介契約には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3つ種類があります。
それぞれの媒介契約の違いは次の通りです。
複数社との契約 | レインズへの登録 | 売主への報告義務 | 自己発見取引 | |
一般媒介契約 | 可能 | 登録義務なし | 報告義務なし | 可能 |
専任媒介契約 | 不可 | 契約締結から7日以内に登録 | 2週間に1回以上 | 可能 |
専属専任媒介契約 | 不可 | 契約締結から5日以内に登録 | 1週間に1回以上 | 不可 |
レインズとは、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しているコンピューターネットワークシステムで、物件情報を登録することによって不動産の売却情報を全国の不動産会社で共有することが可能です。
それぞれの媒介契約の主な違いは「複数社と契約できるか」「レインズへの登録義務があるか」「売主への報告義務があるか」「自己発見取引が可能か」という4点です。
3つの媒介契約の違いを詳しく見ていきましょう。
一般媒介契約
一般媒介契約の特徴は、複数の不動産会社と媒介契約を締結できるという点です。
複数社と契約できるので、「どの不動産会社が信頼できるか分からない」「複数の会社を競争させて有利な条件で売却したい」などのケースに向いています。
ただし、一般媒介契約は不動産会社同士が売買の情報を共有する情報データベースであるレインズへの登録義務がないので、買い手を自社の顧客からしか探してもらえない懸念があります。
さらに、売主への売却活動中の報告義務もないので不動産会社によっては本気で売却活動をしてもらえない可能性もあるでしょう。
専任媒介契約
専任媒介契約は1つの不動産会社としか契約できません。
そのかわり、不動産会社はレインズへの登録を契約から7日以内に行うことが義務付けられていますし、売主への報告も2週間に1回以上行わなければなりません。
信頼できる不動産会社が見つかった場合には専任媒介契約を締結することによって、不動産会社が本気になって売却活動を行ってくれる可能性が高くなるでしょう。
なお、専任媒介契約の場合には、売主が自ら売却先を探す(自己発見取引をする)ことは可能です。
専属専任媒介契約
専属専任媒介契約は、専任媒介契約よりも売主、不動産会社共にさらに縛りが強い取引です。
専任媒介契約との大きな違いは自己発見取引ができないという点です。専属専任媒介は、売却活動の全てを不動産会社へ任せる必要があります。
そのため、不動産会社は売主への報告義務を1週間に1回以上行うことが義務付けられており、不動産会社はより本気になって売却の成功に向けて取り組まなければなりません。
「この会社に売却を任せたい」と、信頼できる不動産会社が見つかった時に、自己発見取引で売却先を探すつもりがない場合には、専任媒介契約ではなく専属専任媒介契約を締結した方が不動産会社はさらに本気になって売却活動に取り組む可能性が高くなるでしょう。
家を売る時に用意する書類
家を売却する際には、多くの書類を用意しなければなりません。
売却時に「必要な書類がない」と慌てることがないよう、必要書類についてもあらかじめ把握しておきましょう。
書類は「査定を受ける際に必要な書類」と「契約・引き渡しの際に必要な書類」の2つに分かれます。
それぞれどんな書類が必要になるのか、詳しく見ていきましょう。
査定を受ける際に必要な書類
査定を受ける際に不動産会社へ提出が必要になる主な書類は次の通りです。
このようにたくさんの書類がありますが、必要書類は物件によって多少異なる場合があり、不動産会社が代理で取得してくれる書類もあるので、上記の書類をすべて自分で揃えておかなければならないわけではありません。現在手元にある書類を確認し、いつでも提出できるようにしておきましょう。
また、査定の際に不動産会社が物件に応じて必要な書類を教えてくれるので、まずは気軽に査定の相談をしてみてください。
契約・引き渡しの際に必要な書類
不動産の契約や引渡し時に必要な書類には次のようなものがあります。
査定の際と同じく、物件によって契約時・引渡し時に必要な書類は多少異なりますが、主に上記の書類が必要になります。
実際には、契約日・引き渡し日を迎える前までに不動産会社が必要書類を一覧で教えてくれるので安心してください。
家を売る時に必要な費用とは?
家を売却する際には様々な費用が必要になり、支出することなく家を売却することはできません。
売却時に必要になる費用としては次のようなものがあります。
家を売る際に必要になる費用とその相場について詳しく解説していきます。
仲介手数料
仲介によって家を売る時には不動産会社へ仲介手数料を支払わなければなりません。
仲介手数料は不動産会社によって異なりますが、宅地建物取引業法によって『物件価格の3%+ 6万円+消費税』までが上限と決められているので、基本的には上記の計算式で算出される仲介手数料がかかるものと考えておきましょう。
なお、仲介によって不動産会社へ支払う費用は原則として仲介手数料のみです。
もし「事務手数料」や「交通費」などの仲介手数料以外の費用を請求してくる業者がいれば、それは悪徳業者であると考えて取引しないようにしましょう。
印紙代
不動産の売買契約書には印紙を貼付しなければなりません。
印紙の金額は、売買金額に応じて次のように異なります。
売買契約書に記載された売買金額 | 売買契約書に貼付する印紙の金額 |
10万円を超え50万円以下 | 400円 |
50万円を超え100万円以下 | 1,000円 |
100万円を超え500万円以下 | 2,000円 |
500万円を超え1千万円以下 | 10,000円 |
1千万円を超え5千万円以下 | 20,000円 |
5千万円を超え1億円以下 | 60,000円 |
1億円を超え5億円以下 | 100,000円 |
5億円を超え10億円以下 | 200,000円 |
10億円を超え50億円以下 | 400,000円 |
50億円を超えるもの | 600,000円 |
売買金額が高いほど、必要な印紙の額も高くなっていく仕組みです。印紙は必ず必要になるものなので覚えておきましょう。
抵当権解除費用
売却する家で住宅ローンを借りている場合には、売却と同時に住宅ローンを完済して金融機関が設定している抵当権を解除しなければなりません。
抵当権の解除には次の費用が必要になります。
戸建ての場合、土地で不動産1筆、建物で不動産1筆と計算するので合計で2筆ということになります。
基本的に抵当権の解除手続きは、司法書士が代理で行います。そのため、登録免許税に加えて司法書士への報酬も費用として発生します。
司法書士への報酬額は司法書士によって異なりますが、1万円~2万円程度が相場と理解しておきましょう。
住宅ローン繰り上げ返済手数料
売却する家で住宅ローンを借りている場合、売却時に住宅ローンの繰り上げ返済を行う際に「住宅ローン繰り上げ返済手数料」の支払いが必要になる可能性があります。
繰り上げ返済手数料の額は金融機関によって異なり、繰り上げ返済手数料が無料の金融機関もあります。
事前に住宅ローンを利用している金融機関へ確認してみましょう。
譲渡所得税
家を売却することによって利益(所得)が発生している場合には、譲渡所得税が課税されます。
譲渡所得税の計算方法は次の通りです。
税率は不動産を所有している期間に応じて次のように異なります。
所有期間5年以下 | 所有期間5年超 | 所有期間10年超 (所有軽減税率の特例) |
39.63% (所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%) |
20.315% (所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%) |
①課税譲渡所得6,000万円以下の部分14.21%(所得税10.21%+住民税4%) ②課税譲渡所得6,000万円超の部分20.315%(所得税15.315%+住民税5%) |
例えば、6年所有した物件を売却した際に500万円の課税譲渡所得が出た場合には、500万円×20.315%=1,015,750という計算になるので、1,015,750円の譲渡所得税が発生します。
高い金額で家を売却できたとしても、その分高額な譲渡所得税が発生する可能性があるので覚えておきましょう。
家を売る時に注意したい4つのポイント
家を売却する際には、次の4つの点に注意してください。
自分で注意すべき点をしっかりと抑えておくことによって、売却の成否は大きく異なります。
家を売却する際に注意したい5つのポイントについて詳しく見ていきましょう。
複数の不動産会社から査定をとる
複数の不動産会社から査定をとることが非常に重要です。
査定額は不動産会社によって異なるのが一般的です。
さまざまな不動産会社の査定額を比較して、最も納得できる査定額の不動産会社と媒介契約を締結しましょう。
信頼できる不動産会社がどこなのかを把握していないにもかかわらず、査定をしてもらうのが1社だけというのはリスクの高い行為です。
必ず複数の不動産会社から査定をとりましょう。
自分で相場を把握しておく
あらかじめ自分で相場を把握しておくことも不動産売却においては非常に重要です。
不動産会社の査定額が本当に市場価格に合致しているかどうかを確認する必要があるためです。
不動産会社に任せきりにしてしまうと、売主に不利な価格設定で売却されてしまう可能性があります。
不動産会社へ相談する前に、不動産情報サイトや国土交通省の土地総合情報システムなどで相場を確認しておきましょう。
不動産会社に売却活動を任せきりにしない
媒介契約を締結したからといって不動産会社に売却活動を任せきりにしてはいけません。
不動産会社がネット上に掲載しているあなたの物件情報を随時確認し、近隣情報などにアップデートする内容がないかどうかを確認しましょう。
また、居住している人だからこそ分かる情報を提供することによって、より売却が成功しやすくなる傾向があります。
不動産会社に売却活動を任せきりにするのではなく、売主自ら積極的に売却活動に参加するようにしてください。
内覧対応にいつでも備える
家の売却活動がスタートしたら、内覧の対応ができるよう常に備えておきましょう。
住宅購入希望者は、住宅の中を見学してから購入の意思決定を行うのが一般的です。
家の中を確認せずに住宅を購入する人はまず存在しません。そのため、内覧は家の売却の成否を左右する重要なポイントです。
内覧に訪れる人がいつ来てもいいように常に自宅は綺麗にしておくようにしましょう。
内覧に来た際に自宅が散らかっていたり水回りが汚れていたりすると、それだけで購入希望者の購入意欲は落ちてしまいますし、売出価格に見合う価値を感じてもらうことも難しくなります。
常に外観や室内を綺麗にしておくとともに、水回りなどの汚れが目立ちやすく掃除が難しい部分に関してはハウスクリーニングを入れるなどして常に内覧に備えておきましょう。
有利な条件で家を売るための4つのポイント
少しでも有利な条件で家を売却したいのであれば、売主自ら以下の4点をしっかりと抑えて売却活動をすることで売却においてプラスになる可能性があります。
有利な条件を家を売却するための4つのポイントについて詳しく見ていきましょう。
人が動く2月〜3月に売却する
最も住宅の需要が大きいタイミングで売却するのがよいでしょう。
一般的に転勤や就職のタイミングである3月に人が動くので、2月と3月は中古住宅の需要が1年の中で最も高くなるシーズンです。
2月〜3月に売却することを目指し、11月〜1月くらいに売却活動を始めれば希望価格に近い価格で、なおかつ早いスピードで売却しやすくなるでしょう。
居住者しか知らない+αの情報を用意する
その家に居住している人しか分からない情報を用意しておきましょう。
購入希望者が家の内覧に来た際などに、不動産会社からは聞いていないポジティブな情報を提供することによって、購入希望者にとって当該不動産の魅力は非常に大きくなります。
例えば、「町会のイベントや縛りなどがないのでとても住みやすい」「今度、家の前の道路がバスの路線になる」「近くの空き店舗にコンビニが出店するらしい」などのポジティブな情報があれば、事前に用意して購入希望者へ伝えましょう。
ホームクリーニングなどで常に綺麗な状態を保つ
できる限りホームクリーニングなどを入れて、家を綺麗な状態に保っておきましょう。
不動産会社が訪問査定を行う際も、購入希望者が内覧を行う際も、家が綺麗な状態であることによって高い価格で売却できる可能性が高くなります。
自分で掃除してモデルハウスのような状態に保つことは非常に困難ですが、ホームクリーニングを利用すれば綺麗な状態にすることは難しくありません。
数万円程度の費用で家全体を綺麗にすることができるので売却活動を始める前にはホームクリーニングを入れることを検討しましょう。
物件によっては買取も検討する
物件によっては仲介ではなく買取も検討することでスムーズに売却できます。
買取とは不動産会社が直接物件を買い取ることです。
敷地面積が広い物件や、解体の必要のある建物付きの物件、築年数が古い物件などは仲介によって一般の人へ売却するのが難しいのが実情です。
敷地面積が広い物件は売価が高額になるので購入者のニーズが低くなり、解体やリフォームが必要な物件も費用が嵩むのでなかなか手が出ません。
このような「購入してすぐに居住することができない物件」や「面積が広すぎる物件」は不動産会社の買取では得意とされており、不動産会社は買取った後に解体やリフォームや分譲するなどして転売することが可能です。
不動産会社と相談のうえ、仲介によって売却しにくい物件は買取を選択することも検討しましょう。
【築年数別】家を売却するコツや注意点
家を売却する際のコツや注意点は戸建ての築年数によって大きく異なります。
築年数別で戸建てを売却するポイントや注意すべき点などについて詳しく解説していきます。
築年数20年以下の一戸建て
築年数が20年以下の比較的新しい一戸建てを売却する際の注意点は次の3点です。
一戸建てはマンションと違い、建物1つ1つで間取りや外装などが全て異なるので周辺の売却相場通りに売れるとは限りません。
そのため、周辺相場から「このくらいの価格では売れるだろう」と安易に資金計画を立ててしまうことは非常に危険です。
相場よりも低い価格でしか売却できないリスクも考慮して、資金計画は慎重に立てるべきでしょう。
また、家の個性によって売却額が大きく異なるので、できる限り多くの不動産会社から査定を受けた方が無難です。
リフォームをするかどうかについては不動産会社に要相談ですが、基本的に外壁がボロボロ、庭が草だらけというような物件は売りにくくなります。
あまりにも見た目が悪い場合には、売却前のリフォームも検討すべきでしょう。
築年数が古い一戸建て
築年数が古い一戸建てを売却する際の注意点は次の3つです。
築年数が古い一戸建ては、古い家の売却経験が豊富な不動産会社と媒介契約を締結することが重要です。
新しい家と古い家では購買層が全く異なるので、ファミリー層などしか相手にしたことがないような不動産会社へ依頼してもスムーズに売却することは難しいでしょう。
古民家や古家付き建物の売却実績が豊富な不動産会社と媒介契約を締結してください。
どこの不動産会社に依頼したらよいか分からないという場合には、一括査定サイトの利用も検討しましょう。
また、築年数が古い一戸建ては、再建築不可の物件である可能性があります。
現在の建築基準法では幅員4m以上の道路に2m以上接していないと建物を建築することができませんが、今の建築基準法ができる前に建てられた建物は幅員4m以上の道路に2m以上接している土地でない場所に建築されていることがあります。
その場合、建物を壊してしまうとその土地には2度と建物を建てることができなくなるので、解体する前に再建築不可の物件ではないかしっかりと調べましょう。
また、古い家を売却する際には、特に契約不適合責任に注意する必要があります。
売却後に何らかの瑕疵が見つかってトラブルにならないよう、売却前にはホームインスペクションを依頼するなどして、瑕疵や不具合を洗い出すようにしてください。
不動産会社だけじゃない!家を売る時の理由別の相談先
家を売却したいと考えた時、ほとんどの人が相談先として不動産会社を連想します。
しかし家を売る際の相談先として挙げることができるのは不動産会社だけではありません。
このように家を売却する理由は様々ですが、売却理由によって適切な相談先は異なります。
離婚で家を売るなら金融機関か弁護士へ
離婚を原因として家を売るのであれば金融機関か弁護士へ相談しましょう。
離婚後は夫婦の生活の場であった住宅が不要になるので、売却してローンを完済したいと考える人が多数存在します。
家の売却代金によってローンを完済できるのであれば金融機関へ相談する必要はありませんが、売却代金を充ててもローンの残高が残る場合には金融機関の許可がないと売却することが不可能です。
家を売却してもローンが残る場合には、金融機関へ「離婚するので家を売って住宅ローンを返済したい」と相談しましょう。
また、住宅も住宅ローンも離婚時の財産分与の対象になります。
家を売却し、売却代金をどのように配分するのか、ローンはどちらが返済していくのか、ということが当人同士の話し合いで解決できない場合には弁護士へ相談しましょう。
相続で家を売るなら司法書士か弁護士へ
相続の際に家を売って、売却代金を相続人で分けることがあります。このようなケースでは司法書士か弁護士へ相談してください。
相続人間で遺産分割協議がスムーズに進み、特に問題なく遺産分割協議書を作成できるのであれば弁護士も司法書士も必要ありません。
しかし相続人同士が遺産の配分に対して揉めて、揉め事を回避するために住宅を売却するようなケースにおいては、売却の手続き当初から弁護士や司法書士などの専門家に間に入ってもらわない限りは売却代金の配分で再び揉めてしまう可能性があります。
相続で家を売るのであれば司法書士か弁護士へ相談するようにしてください。
税金対策で家を売るなら税理士へ
税金対策で家を売るのであれば税理士へ相談の上、家の売却手続きを進めた方がよいでしょう。
家を売却する際には以下のような税金対策をすることが可能です。
節税方法 | 内容 |
特定居住用財産の買い替え特例 | 所有期間10年超の家を売却し、一定期間内に新たな住宅を取得した場合には、譲渡所得への課税を繰延べできる |
3000万円の特例控除 | 家の売却時に譲渡所得から3000万円(譲渡所得が3000万円以下の場合はその金額)を控除できる |
居住用不動産の譲渡損失の損益通算と繰越控除 | 家の売却によって生じた損失と他の所得の損益通算ができる |
このような税制優遇をしたい場合には、税理士へ相談した上で売却した方が確実でしょう。
住宅ローンが返せないなら弁護士と金融機関へ
住宅ローンを返済できないという理由で家を売る場合には、弁護士へ相談し、任意売却の手続きを進めます。
任意売却とは、金融機関の同意を得て住宅を売却して住宅ローンを返済し、住宅売却後に残債の返済を継続していく債務整理の1つの方法です。
まずは弁護士と相談し、どのような債務整理の方法がよいのかを検討しましょう。
その上で「任意売却がよい」と決まった場合には、金融機関の許可を得た上で不動産会社などに依頼し住宅を売却します。
最初から弁護士へ相談すれば、金融機関や不動産会社との交渉の間に立ってくれるのが一般的です。
住み替えで家を売るなら不動産会社と金融機関へ
住み替えで家を売るのであれば、まずは不動産会社と交渉を行いましょう。
新しい家を購入する不動産会社と、古い家を売却する不動産会社それぞれから購入金額の見積もりと売却額の見積もりを取得します。
その後、すでに住宅ローンを借りている金融機関へ「住み替えるから今の住宅ローンを返済して、新たな住宅ローンを借りたい」と交渉します。
交渉が成功すれば、古い住宅ローンを売却代金で完済し、新たな家の住宅ローンを借りることが可能です。
また、金融機関によっては「住み替えローン」という商品を取り扱っています。
このローンは、古い家の住宅ローンを売却代金で完済できない場合、残債分と新規住宅購入資金を合算して新たな住宅ローンを借りるというものです。
例えば、既存の住宅ローン残高が2,000万円、住宅売却価格が1,500万円、新規住宅価格が3,000万円の場合、住宅売却によって不足する500万円と新規住宅購入費用3,000万円を合わせた3,500万円の借入をすることが可能です。
住宅売却や自己資金によって住宅ローンを完済できない場合には、住み替えローンを取り扱っている金融機関へ相談しましょう。
まとめ
家を売る際には仲介によって売却するのが基本です。
不動産を売る際には注意すべき点がいくつもありますが、媒介契約を締結する不動産会社さえ間違えなければ大きなトラブルなく、スムーズに不動産を売却することができます。
そのため、媒介契約を締結する不動産会社選びを慎重に行うことを心がけましょう。
依頼する不動産会社に迷っている場合には、ぜひ一括査定サイトを利用してください。
仲介によって売却するのが基本ですが、仲介で不動産を売却することには3ヶ月以上の時間がかかってしまうことも珍しくありません。
不動産の売却には時間がかかることを考慮して、売却したい半年程度前から不動産会社選びや書類の準備などを進めるようにしましょう。