マンションを売却するためには、一定の時間が必要です。
しかし1年以上もの時間をかけてマンションを売却することは適切ではありません。
マンションは平均的には4ヶ月程度で売れているので、4ヶ月程度で売却することを目指すべきでしょう。
マンションを売却する適正な期間や流れ、売却期間を短縮するポイントなどについて詳しく解説していきます。
マンション売却の5つのステップ
マンションを売却するためには次の5つの流れで行います。
マンション売却の流れごとにかかる期間についてみていきましょう。
査定
まずは売り出し価格をいくらにするのか決めるため、査定を行います。
査定価格はマンションの立地や築年数や間取りなどによって大きく異なります。
また、不動産会社によっても査定額が異なるので、売却を任せたい不動産会社が決まってないのであれば、一括査定サイトなどを利用して複数の不動産会社から査定を得ることをおすすめします。
査定には1週間程度の時間がかかるのが一般的です。
媒介契約の締結
査定をしてもらい「売却活動を任せてみよう」と思う不動産会社が決まったら、媒介契約を締結します。
媒介契約の種類は次の3つです。
媒介契約の種類 | 特徴 | レインズへの登録 |
一般媒介契約 | ・複数社と契約できる ・売主自ら買い手を探せる ・売主への報告義務なし | ・登録義務なし |
専任媒介契約 | ・1社としか契約できない ・売主自ら買い手を探せる ・売主へ14日に1回の報告義務あり | ・媒介契約を締結した翌日から7日以内に登録義務あり |
専属専任媒介契約 | ・1社としか契約できない ・売主自ら買い手を探せない ・売主へ7日に1回の報告義務あり | ・媒介契約を締結した翌日から5日以内に登録義務あり |
売主、不動産会社共に契約の縛りが一番緩いのは一般媒介契約で、一番縛りが厳しいのは専属専任媒介契約になります。
複数の不動産会社同士で競わせたい場合や、信頼できる1社が見つからない場合は一般媒介契約を締結し、信頼できる不動産会社が存在する場合には(専属)専任媒介契約を締結すると良いでしょう。
媒介契約にかかる期間も1週間程度を見ておきましょう。
売却活動
媒介契約を締結したら、いよいよ売却活動を行います。
売却活動は基本的に不動産会社が行うものですが、売主は何もしないでいいというわけではありません。
一般媒介契約と専任媒介契約であれば売主自ら買い手を探すことが可能です。
また、売り出し中の物件は不動産会社のホームページやポータルサイトなどに掲載されるので、掲載された物件情報にプラスアルファの情報を加えることができないかしっかりと検討しましょう。
物件のおすすめポイントや近所の商業施設や穴場スポットなど、住んでいる人しか分からないような情報を加えることでマンションの付加価値は大きく高まります。
売却活動期間中も、常に情報をアップデートできないか考えましょう。
また、この期間は購入希望者が部屋の内見に訪れることがあります。
内見の際に「汚い」などマイナスなイメージに思われることがないよう、常に部屋は綺麗にしておくのはもちろん、状態によってはハウスクリーニングを行いましょう。
なお、売却活動は一般的に平均3ヶ月程度かかります。
申し込みと売買契約の締結
購入希望者が見つかったら、購入希望者は不動産会社へ申し込みを行い、売主と買主の間で売買契約を締結します。
中古マンションを売却する際には、契約不適合責任に十分注意しなければなりません。
契約不適合責任とは、契約の内容に適合しない目的物の場合に売主が負う責任のことをいいます。例えば、契約書に記載のない不具合が見つかった場合、その不具合を解消するために売主は修補等の対応をしなければなりません。
一般媒介契約と専任媒介契約の場合は売主が自ら買い手を探すことができますが、直接買主と取引する際は特に契約不適合責任に十分注意する必要があります。
心配な方は不動産会社に仲介を任せた方が安心でしょう。
引き渡し
売買契約が完了したら、売買代金の受け渡しと同時に物件の引き渡しを行い、売却活動終了です。
ただし、引き渡しと言っても家の鍵を渡すだけではありません。
引き渡し日当日は所有権移転登記を行う必要があるため、必要な書類を司法書士へ渡し、司法書士が法務局へその書類を持ち込んで受理がされたら無事に引き渡しの手続きが完了します。
そのため、引き渡し日は法務局が開いている平日に行うのが一般的です。
売買契約締結から引き渡しまでには平均1週間から1ヶ月程度の時間がかかります。
なお、買主がローンを組んで購入するのであれば、場合によっては1ヶ月以上の時間がかかることもあります。
マンションの売却期間は平均4ヶ月
マンションの売却期間は平均的に4ヶ月程度かかります。
中古マンションの市場はここ数年で活況を呈しており、売り手市場です。
東京都におけるマンションの平均売却期間は2016年で3.29ヶ月、2017年で3.53ヶ月と非常に短い期間で売却できていましたが、2019年には3.78ヶ月と少し長くなっています。
東京オリンピック前の数年間は東京のマンション市況は非常に活況でしたが、オリンピックが終わると売却期間も長くなり、以前ほど売り手市場と言える状況ではないようです。
とはいえ、平均的には4ヶ月弱の売却期間でマンションを売ることができています。
売却期間と価格の関係
売却期間と売却価格は相関関係にあり、まとめると次のようなことが言えます。
- 価格が高すぎると売却期間は長くなる
- 値上がりが期待できると売却期間は短くなる
- 中古マンションの需要が小さいと売却期間は長くなる
- 売却期間が長くなると値下げ幅は大きくなる
- 売却期間が短い方が値下げ幅は小さい
非常に簡単にまとめると「売却期間が長くなると売却価格は安くなる」ということが言えるようです。
売却期間と売却価格の関係について詳しく解説していきます。
価格が高すぎると売却期間は長くなる
売却価格が高すぎると売却期間は長くなる傾向にあります。
東京都と大阪府のマンションの売却期間を比較すると分かりやすいのでみてみましょう。
東京 | 大阪 | |
2016年 | 3.29ヶ月 | 2.98ヶ月 |
2017年 | 3.53ヶ月 | 3.31ヶ月 |
2018年 | 3.66ヶ月 | 3.59ヶ月 |
2019年 | 3.78ヶ月 | 3.40ヶ月 |
上記の表を比較すると、大阪は東京よりも売却期間が短いことが分かります。
これは単純に「大阪の方が人気がある」というわけではありません。
東京のマンションはあまりにも高騰しすぎているので、一般の消費者には手が出しにくくなっていることからこのような結果となりました。
大阪のマンションは東京ほど高騰していないので購入するまでの意思決定に時間がかからず、売却期間も短くなる傾向があります。
値上がりが期待できると売却期間は短くなる
社会的な事情によって値上がりが期待できる場合には、売却期間は短くなる傾向があります。
これは一般的に「市場が加熱している」と言われる状況です。
2016年に東京都の売却期間が短くなったのは、東京オリンピック前の値上がりを期待した投資需要が活況だったからと考えられます。
大阪においても、今後は2025年の大阪万博に向けて値上がりを期待する需要が現れれば、不動産市況がさらに活況になり、今よりも売却期間が短くなっていく可能性があるでしょう。
中古マンションの需要が小さいと売却期間は長くなる
中古マンションの需要が小さいと売却期間は長くなります。
以下は愛知県の売却期間です。
愛知県の平均売却期間 | |
2016年 | 3.67ヶ月 |
2017年 | 3.54ヶ月 |
2018年 | 3.78ヶ月 |
2019年 | 3.45ヶ月 |
東京都よりも売却期間が短い年はありますが、相対的に東京や大阪よりも売却期間が長くなっています。
マンションの価格は東京や大阪よりも安値であるにも関わらず売却期間が長いのは「マンションそのものの需要が少ないから」です。
愛知では中古マンションよりも一戸建ての需要が大きいため、マンション市場がそれほど加熱しておらず、売却期間が比較的長い傾向にあります。
これは地方に行けば行くほど顕著な傾向であり、地方のマンションを売却する場合には4ヶ月以上の時間をかけても売却できないことは決して珍しくありません。
どのくらいの売却期間が必要になるのかは、地元の不動産会社へ確認した方がよいでしょう。
売却期間が長くなると値下げ幅は大きくなる
不動産の売却期間が長くなると、値下げ幅は大きくなる傾向にあります。
三井住友トラスト不動産によると、2018年〜2019年の売却期間ごとの乖離率(売出価格と取引価格の差)は次のようになっています。
売却期間 | 乖離率 |
---|---|
1ヶ月 | -3.1% |
2ヶ月 | -5.16% |
3ヶ月 | -6.21% |
4ヶ月 | -6.98% |
5ヶ月 | -8.47% |
6ヶ月 | -8.65% |
7ヶ月 | -9.72% |
8ヶ月 | -10.19% |
9ヶ月 | -10.22% |
10ヶ月 | -11.68% |
11ヶ月 | -11.85% |
12ヶ月 | -11.11% |
売却期間が長くなればなるほど、不動産を少しでも早く売却するために値下げを行って売却します。
実際に売却期間1ヶ月の物件では、3%しか値下げがされていないのに対して、売却期間が8ヶ月を過ぎると値下げ幅は10%以上になります。
時間をかけても売れない不動産の値はどんどん下がっていくのが実情です。
売却期間が短い方が値下げ幅は小さい
一方、売却期間が短い方が値下げ幅が小さいのも実情です。
売却期間が1ヶ月くらいの場合では、乖離率は3%程度しかありません。
これは、買い手が見つかりやすい良好な物件においては大きな値下げをしなくてもすぐに売れてしまうということです。
優良な物件ほど短期間かつ好条件で売却できます。
マンションの売却期間が短くなる3つの条件とは
マンションの状態によっても売却期間が長くなったり短くなることがあります。
次の3つのいずれかの条件に当てはまっていると、マンションの売却期間は短くなる可能性があります。
- 築年数が5年以内のマンションは早く売れる
- 駅徒歩6分以内のマンションは早く売れる
- 需要が高い専有面積のマンションは早く売れる
築年数が5年以内のマンションは早く売れる
築年数が5年以内のマンションは早く売れる傾向があります。
西日本レインズのデータによると築年数と売却期間の関係は次のようになっています。
築年数 | 平均売却期間 |
---|---|
5年以下 | 45.6日 |
6年~10年 | 48日 |
11年~15年 | 52.2日 |
16年~20年 | 57.7日 |
21年~25年 | 63日 |
このように、築年数が経過すればするほど、売却期間は長くなる傾向にあります。
築年数が経過したマンションを売却する場合には、ある程度の長い売却期間が必要になると理解しておいた方がよいでしょう。
駅徒歩6分以内のマンションは早く売れる
中古マンションであっても駅徒歩6分以内に立地しているマンションは早く売れる傾向があります。
東京カンテイによると、駅徒歩6分以内の物件は首都圏平均よりも15日ほど早い期間で売却できるとされています。
物件から駅までの距離 | 平均売却期間 |
---|---|
徒歩3分以内 | 2.85ヶ月 |
徒歩6分以内 | 2.83ヶ月 |
徒歩10分以内 | 3.07ヶ月 |
徒歩15分以内 | 3.23ヶ月 |
マンション購入希望者の多くが、マンションを選ぶ際に交通の利便性を重視していることが分かります。
首都圏であれば駅に近い物件ほど早期に売却できるでしょう。
需要が高い専有面積のマンションは早く売れる
専有面積の需要が高ければ高いほどマンションは早く売却することが可能です。
東京カンテイによると、30㎡〜70㎡の専有面積のマンションの平均売却期間は3ヶ月以内となっていますが、80㎡台を超えると売却期間は3ヶ月を超えてしまいます。
広過ぎる物件は需要が少なく、価格も高くなるので売却期間も長くなる傾向にあります。
物件の広さによって売却期間も変わってくると理解しておきましょう。
マンションの売却期間を短くするための5つのポイント
マンションの売却期間を少しでも短くしたいのであれば、不動産会社の選び方や価格設定において次の5つのポイントを押さえましょう。
マンションの売却期間を短くするための5つのポイントについて詳しく解説していきます。
中古マンション売却に強い不動産会社を選ぶ
中古マンションの売却に強い不動産会社を選ぶことで、マンション売却が円滑に進む可能性があります。
中古マンションの売却に強い不動産会社の特徴は次の3つです。
- ポータルサイトに多数の物件を掲載してる
- サポートサービスが手厚い
- ホームページに過去の売却実績を豊富に掲載している
ポータルサイトに多数の物件を掲載してる
不動産のポータルサイトに売り出し中のマンションを多数掲載している会社は、中古マンションの売却に強い可能性があります。
売り出し中の中古マンションの掲載数が多いほど、その会社は中古マンションの売却依頼を受けていることになります。
また、そもそも中古マンションの売却に対して力を入れていないのであれば、多額の広告費を支払う必要はありません。
ポータルサイトに多数の中古マンションを掲載しているということは、中古マンション売却に対して前向きな姿勢ということですのでこのような不動産会社はマンション売却をスムーズに行えるでしょう。
サポートサービスが手厚い
マンション売却に関するサポートサービスが手厚い会社も、比較的早くスムーズに売却できる可能性があります。
- ハウスクリーニングサービス
- 不用品引き取りサービス
- 荷物預かりサービス
- インスペクションサービス
これらのサポートサービスが手厚い不動産会社は中古マンションの売却に対して非常に前向きで、売却に強い会社であると考えられます。
不動産会社にどのようなサポートサービスがあるのかも確認しましょう。
ホームページに過去の売却実績を掲載している
不動産会社が実際にどの程度の売買実績があるのかを確認することも重要です。
不動産会社の中にはホームページに過去の売却実績を掲載している企業も多数存在します。
マンションの売却実績が多いほど、その会社は中古マンションの売却能力が高いということですので、売却を任せるに値する企業だと言えるでしょう。
需要が多いタイミングで売りに出す
中古マンションの需要が多いタイミングで売りに出すことで短い売却期間で売れることが期待できます。
需要が多いタイミングには季節的な要因と市況的な要因があります。
それぞれ具体的にどのようなタイミングなのか、詳しく見ていきましょう。
季節的な要因
季節的な要因とは、中古マンションの購入需要が最も多い季節を指します。
一般的に中古の不動産は転勤などで人が動く4月に向けて、2月と3月が最も市況が活況になると言われています。
このタイミングに合わせて売却することで、中古マンションが比較的早く売却できる可能性があります。
市況的な要因
市場全体が活況を呈しているタイミングで売却するのも有効な方法です。
例えば、東京では東京オリンピックが決まった後数年間は中古マンションの市況は活況でした。
また、大阪では大阪万博に向けてマンションの市況が活況になることが予想されています。
このように社会的な要因を背景として、中古マンションが売りやすいタイミングで売りに出すことで売却期間を短縮することが可能です。
売り出し価格を適正な価格に設定する
売り出し価格を適正な価格に設定しましょう。
不動産は高くも安くもなく、適正な価格で売却することがベストです。
ところが不動産会社によっては意図的に高い価格や安い価格で売り出し価格を設定することがあります。
不動産会社の中には売却依頼を受けたいあまりに売り出し価格を高く提示してくることがありますが、相場よりも高い価格で不動産を売却することは難しいのが実情です。
また「早く売って利益を出したい」と考える不動産会社は、相場よりも安い価格で売り出し価格を設定することがありますが、その場合は売却期間を短くできたとしても売主が損をすることになります。
不動産会社の恣意的な売り出し価格に左右されないよう、まずは自分で周辺の物件相場を把握し、適正な売り出し価格を設定する不動産会社と媒介契約を締結しましょう。
できる限りすぐに売りたいなら買取も検討する
できる限り売却期間を短くしたいのであれば、買取も検討しましょう。
買取とは、エンドユーザーである買主へ売却するのではなく、不動産会社へ直接売却する方法です。
不動産会社が「転売によって利益を狙うことができる」と判断する物件であれば、不動産会社に直接マンションを買い取ってもらうことができます。
買取の場合には買主を探す時間がかからないので、媒介契約を結んで売却活動をするよりも素早く売却でき、早期資金化を実現することが可能です。
ただし、不動産会社は仕入れのために買取を行うので、市場価格の7~8割程度の価格で売却することになります。
売却期間を短くすることはできますが、売却価格は著しく低くなってしまうのがデメリットです。
一括査定サイトを利用する
一括査定サイトを利用して、複数の不動産会社に相談することでも早期に売却することが可能です。
一括査定サイトとは、WEB上で売却したいマンションの情報を入力し送信すると、一斉に複数の不動産会社から査定を得ることができるというものです。
簡単に複数社からの査定を得ることができ、これまで付き合いがなかった不動産会社と出会うことができます。
また、一括査定サイトに登録されている不動産会社は、サイト運営側の厳しい基準をクリアした業者のため悪徳業者は排除されており安全です。
各社からの査定結果を比較し、早期に売却してくれそうな会社を見つけましょう。
まとめ
マンションの売却期間は平均で4ヶ月程度と言われています。
売却期間は、物件の価格、面積、築年数、立地などが影響しますが、結局のところどの不動産会社と取引をするかという点が非常に重要になります。
中古マンション売却に強い不動産会社と媒介契約を締結するのがベストですが、適正な業者が分からない場合には一括査定サイトの利用などを検討しましょう。