住宅ローンの返済が困難になったら、任意売却の検討をはじめましょう。
自宅を売却してもローンの完済ができない場合、通常であれば売却することができませんが、金融機関の同意を得て行う任意売却であれば、売却後にローンが残ってしまう場合であっても売却することが可能です。
住宅ローンの滞納が続けば、いずれ自宅は競売にかけられてしまいます。ローンの滞納が続いてしまう前に任意売却を選択して最悪な状況になることを防ぎましょう。
しかし、はじめて任意売却を検討する人にとっては、何から始めたら良いのか、どこに何を相談すれば良いのか分からない人が多いでしょう。
任意売却は専門的な法律の知識やノウハウが重要になるため、適切な相談先を選択することが大切です。
この記事では、状況に応じた適切な相談先や、相談の際に確認すべきことなどについて解説していきます。
任意売却の相談先に欠かせない3つの知識
任意売却では様々な知識や経験、能力が求められます。
そのため、任意売却の相談を受けた相談先は次の3つの知識を欠かすことができません。
任意売却を相談する相手に欠かすことができない3つの知識について詳しく解説していきます。
不動産売買の知識
任意売却とは、自宅を売却しても住宅ローンの完済が不可能な場合、金融機関の同意を得て売却する行為です。
しかし、売却後の住宅ローンの残債はチャラになるわけではなく、少しでも高く売却しなければ住宅ローンの残債が多く残ってしまうので、ある程度の値段で売却しなければなりません。
とはいえ、売却に時間がかかりすぎると任意売却が可能な期間のタイムリミットを迎えてしまい、競売に至ってしまう可能性があります。
そのため「少しでも高く売る」「素早く売却する」という不動産売買のノウハウや販売力が重要になります。
任意売却以前に、賃貸の仲介しか経験がないような不動産会社へ相談しても任意売却が成功することはないでしょう。
金融機関と交渉する知識
任意売却は、ローンの完済ができない状態において金融機関の許可を得て売却する方法です。
不動産を売却するには、登記されている抵当権を抹消する必要があります。
本来、抵当権を抹消するにはローンの完済が条件となりますが、任意売却ではローンが残る状態であっても抵当権を抹消してもらうことができるため、売却が可能となる仕組みです。
つまり、任意売却は金融機関にとっては本来返済してもらうべき額が未納の状態であっても抵当権を外して売却を許すかどうかという決断をすることになります。
そのため、金融機関の許可が得られなければ任意売却を行うことはできません。
金融機関との交渉によって「残債を無担保で分割返済する」「残債については(一部)免除してもらう」などの結論に至ることが多いですが、それは相談先の交渉能力次第です。
不動産売買の知識だけでなく、売却後に残ったローンの返済計画を立てることができる金融的な能力や、金融機関と交渉できるだけの経験や実績がないと任意売却は成功しないでしょう。
任意売却に関する法律の知識
任意売却は民法に基づいた法律的な行為です。
そのため、次のような任意売却に関係する様々な法律の知識が必要になります。
- 民法
- 民事訴訟法
- 民事保全法
- 民事執行法
- 区分所有法
- 債権に関する法的な知識
例えば、一般的な不動産売買の仲介しか行っていない不動産会社へ相談すると、宅地建物取引業法の知識はあっても、上記のような任意売却に関係する法律的な知識は持っていません。
そのため、任意売却の経験や実績に加えて、任意売却の法的知識をしっかりと持った任意売却専門の不動産会社や弁護士、司法書士などへ相談するのがよいでしょう。
任意売却の3つの相談先|それぞれのメリット・デメリットとは?
では具体的に任意売却の相談はどこにすべきなのでしょうか?
具体的な相談先として挙げられるのが次の3つです。
上記3つの相談先であれば、基本的にどこへでも相談することはできますが、それぞれメリットとデメリットがあります。
相談先ごとの特徴とメリット、デメリットについて詳しく解説していきます。
不動産会社
任意売却は不動産を売却する取引です。
そのため、不動産売却の仲介を行う会社は必ず宅地建物取引業の免許が必要になります。
つまり、どこに相談するにしても必ず不動産会社は絡ませないと任意売却の手続きを進めることはできないと理解しておきましょう。
また、不動産会社の中には任意売却関連の法的知識や金融の知識が豊富な専門業者が存在します。
そのような業者へ相談することによって、ワンストップで任意売却の手続きが完結するでしょう。
不動産会社へ任意売却の相談をするメリットとデメリットについて詳しく解説していきます。
不動産会社に任意売却を相談するメリット
不動産会社に任意売却の相談をするメリットは、任意売却についての知識と経験が豊富な専門業者と取引すれば他に相談する必要がないという点です。
任意売却を専門としている不動産会社であれば、不動産の売却はもちろん、金融機関との交渉も上手に行ってくれるので手続きはスムーズに進んでいきます。
また、そのような任意売却専門業者に依頼しても、手数料は不動産を売却する際の仲介手数料しか発生しないので、余計な相談料や手間賃などを支払う必要がありません。
不動産会社に任意売却を相談するデメリット
不動産会社に任意売却を相談するデメリットは、業者によって対応や成果が異なるという点です。
任意売却は通常の不動産売買とは異なり、法的な知識や経験が必要となり、それに加えて金融機関との交渉能力も欠かすことができません。
そのため、通常の仲介業しか行っていない不動産会社や、任意売却の知識や経験がない業者へ相談してしまうと次のようなトラブルになることがあります。
- 住宅ローンの残債以上で売却しなければならないと勘違いし売り出し価格が高すぎる
- 早く売却しなければならないと思い安く売りすぎる
- 金融機関との交渉ができない
どの不動産会社に任意売却を任せるのかによって、任意売却の成果は大きく異なります。
一般的な不動産会社ではなく、任意売却を専門としている不動産会社へ相談すると安心でしょう。
弁護士・司法書士
弁護士や司法書士にも任意売却の相談をすることはできます。
ただし、弁護士や司法書士では不動産の売却はできないので、売却においては知り合いの不動産会社を紹介されて任意売却の手続きを進めることになるでしょう。
弁護士や司法書士へ任意売却の相談をするメリットとデメリットについて詳しく解説していきます。
弁護士・司法書士に任意売却を相談するメリット
弁護士や司法書士へ任意売却の相談をするメリットは、他の借金の相談もできるという点です。
住宅ローン以外に複数の借金を抱えている場合には、任意売却以外にも債務整理手続きを進めていかなければなりません。
このような場合には、住宅ローン以外の借金の減額交渉もできる弁護士や司法書士などに相談することによって、任意整理や個人再生など様々な方法で借金を精算することができます。
また、交渉と法律のプロである弁護士や司法書士へ相談することによって、任意売却における金融機関との交渉も成功する可能性が高いでしょう。
弁護士・司法書士に任意売却を相談するデメリット
任意売却だけを行うのであれば、弁護士や司法書士に相談する意味はほとんどありません。
任意売却は不動産取引になるので、結局は任意売却の知識と経験が豊富な不動産会社を弁護士や司法書士が紹介することになるためです。
一度弁護士や司法書士に相談してしまえば相談料がかかります。また、高額な相談料を要求する弁護士や司法書士も存在するので注意が必要です。
住宅ローン以外の借金も精算したい場合には弁護士や司法書士へ相談することが非常に有効ですが、任意売却だけを希望するのであれば、最初から任意売却に強い専門の不動産会社へ相談した方がメリットがあるでしょう。
金融機関
住宅ローンの返済が苦しくなった時には、まず先に住宅ローンを借りている金融機関へ相談することが基本です。
住宅ローンの返済ができない場合、金融機関は最初に返済額軽減のためのリスケジュールを行い、それでも返済ができない場合には金融機関の方から任意売却を勧めてくることがあります。
そのため、先に金融機関へ相談することによってスムーズに任意売却まで進めることができる可能性があります。
ただし、金融機関へ任意売却の相談をすることが必ずしも住宅ローン利用者のメリットになるとは限らないので十分に注意しましょう。
金融機関へ任意売却の相談をするメリットとデメリットについて詳しく解説していきます。
金融機関に任意売却を相談するメリット
金融機関に任意売却を相談するメリットは次の2つです。
あまりにも返済に遅れてしまう前に「返済が苦しい」と相談しておけば、むしろ金融機関はリスケジュールなどの提案によって返済ができるようになるよう支援してくれます。
金融機関が競売などの強行手段をとるのは「連絡がつかない」、「待っていても返済できる見込みがない」などの場合ですので、早い段階から「返済が難しい」と相談しておけば突然裁判所へ競売の申し立てをするようなことはまずありません。
また、リスケジュールを行っても返済ができない場合には、金融機関の方から任意売却を勧めてくるでしょう。
この際には、金融機関が信頼できる不動産会社を紹介してくれるので業者選びに頭を悩ませる心配はありません。
金融機関に任意売却を相談するデメリット
金融機関へ任意売却の相談をすることによって、競売に至る前に任意売却ができる可能性が高く、安心できる不動産会社を紹介してもらえることもあります。
しかし、金融機関によっては任意売却を認めない場合もあるので注意が必要です。
また、任意売却をしたいと伝えても「不動産会社は自分で探してください」と言われるだけの可能性もあり、せっかく相談しても具体的な手続きを何も進めることができないこともあります。
任意売却の相談先の見極め方
任意売却は、任意売却に精通した不動産会社に相談するのがベストです。
しかし、任意売却に精通した不動産会社はどのようにして選べばよいのでしょうか?
任意売却に精通した業者を選ぶポイントとして次の5点をあげることができます。
安心して任意売却の相談ができる業者を選ぶ5つのポイントについて詳しくみていきましょう。
過去の実績が多い
不動産売買の実績が多い不動産会社を選びましょう。
一般的に不動産会社のホームページには過去の取扱実績が掲載されていますが、掲載されている実績ができるだけ多い業者を選択しましょう。
不動産の売却には1つとして同じケースはありません。
立地、築年数、間取りなど必ず一つひとつの物件事例は異なるものなので、数多くの取り扱いを行ってきた業者の方が、様々な物件を売却するノウハウを蓄積しています。
また、任意売却は金融機関との交渉が必須ですが、売買の実績が多い不動産会社はあらゆる金融機関との付き合いを持っているため、住宅ローンの借入先に顔がきく可能性があります。
任意売却を専門としている
不動産会社は数多く存在しますが、不動産会社の中には任意売却を専門としている業者も存在します。
インターネットで検索して、任意売却を専門としている不動産会社に相談をすればスムーズに話しを進めることができるでしょう。
また、任意売却に特化している不動産会社は住宅ローンを借りている金融機関と付き合いがある可能性が高いので、交渉が成功しやすいと言えます。
弁護士や司法書士と連携した不動産会社
他にも借金がある場合、弁護士や司法書士と連携した不動産会社を選びましょう。
任意売却だけであれば不動産会社と金融機関だけのやりとりで完結しますが、他にも借金がある場合には弁護士などと連携して債務整理も検討する必要があります。
また、弁護士や司法書士と連携した不動産会社は住宅を売ることだけでなく、売却後の生活や転居先、残債の返済などについても細やかに対応してくれる傾向があります。
提携している弁護士事務所などが明らかになっている不動産会社へ相談するとよいでしょう。
電話などの対応に問題がない
基本的な話ですが、電話などの対応に問題がない業者と取引すべきです。
思い出が詰まった住宅という生活の基礎の基礎となる財産を売却する行為である任意売却は、売主にとっては切実で辛い問題です。
このような気持ちを理解してくれない業者と取引をしていくことは精神的にも困難だと言えます。
電話などの対応から「信頼できる雰囲気か」「こちらの悩みを相談できそうか」「頼りがいがあるか」などということを確認し、少しでも違和感があるのであれば相談する業者を再検討した方がよいでしょう。
仲介手数料以外を要求しない
通常の不動産売買であろうと任意売却であろうと、不動産会社へ支払う費用は次の通りに法律で定められた仲介手数料だけです。
売買取引価格 | 仲介手数料 |
---|---|
200万円以下 | 取引物件価格(税抜)×5%+消費税 |
200万円超~400万円以下 | 取引物件価格(税抜)×4%+2万円+消費税 |
400万円超 | 取引物件価格(税抜)×3%+6万円+消費税 |
任意売却の際にかかった広告費、交通費などの経費や、弁護士の紹介料なども別途請求することは宅地建物取引業法違反となります。
つまり、上記の仲介手数料を超える費用はどんな名目でも支払う必要はありません。
悪徳な業者は、任意売却手数料などの適当な名目をつけて仲介手数料以外の費用を請求する場合がありますが、そのような業者は全て違法業者だと考えて取引しないようにしましょう。
そのため、事前に費用を確認し、必要な費用は仲介手数料のみと断言する業者とだけ取引してください。
任意売却の相談で確認すべき5つのポイント
任意売却の相談は、任意売却を専門に行う不動産会社に相談すべきです。
事前に業者へ伝えることや確認すべきことを把握しておくことで、よりスムーズに任意売却の手続きを進めることができます。
相談時に確認をすべき5つのポイントは次の通りです。
最初の相談時にこれら5つのことを確認しておくことによって、任意売却の具体的なイメージを掴みやすくなり、手続きもスムーズに進むでしょう。
任意売却の相談で確認すべき5つのポイントについて詳しく解説していきます。
そもそも任意売却をすべき状況か
住宅ローンの返済が苦しいというだけで安易に任意売却という選択をすべきではないでしょう。
家族が居住する大切なマイホームを本当に手放さなければならない状況かどうかをまず一番に確認すべきです。
状況によっては任意売却ではなく、金融機関へ相談することによってリスケジュールで対応できる場合があります。
- 一時的に仕事を失って返済できない→元金返済の据え置きで一定期間利息のみの返済に切り替える
- 給料が減って返済が厳しい→最終期限の延長で毎月返済額を軽減する
上記のような状況に該当する場合は、任意売却という手段に出る前に、これらの方法によって住宅ローンを返済していくことができるようになる可能性があります。
まずは自分の状況が任意売却をしなければならないのかということを業者へ相談しましょう。
どんなスケジュールで任意売却が進むのか
どんなスケジュールで任意売却が進んでいくのかも確認しましょう。
任意売却は買い手さえ見つかれば素早いスケジュールで完結し、早ければ2ヶ月程度で家を引き渡さなければならない可能性もあります。
反対に、滞納状況が長期化していれば金融機関との交渉が長引き、時間がかかることもあります。
つまり、状況によって任意売却にかかる時間はかなり異なるので、ご自身の状況を赤裸々に伝え、自分の場合はどの程度の時間がかかるのかということをしっかりと確認しましょう。
スケジュールを確認することによって家族にも早くから伝えることができますし、余裕を持って引越しの準備をすることもできます。
不動産の売却価格はいくらになるのか
売却価格がいくらになるのかという確認も重要です。
業者によっては査定額が恣意的に変わることがあるためです。
そのため、あらかじめインターネットなどで調べて周辺の不動産相場を確認しておき、自分の家がいくらくらいになるのかの相場感を把握しておきましょう。
相場をある程度知っておけば、不動産会社の査定額が適正価格かどうかを確認することができます。
不動産は適正価格で売却されることが最も重要ですので、売却価格があまりにも相場からかけ離れている場合には、その理由を確認することを忘れないようにしてください。
残債についてどうするのか
任意売却では売却額よりも住宅ローン残高の方が大きいため、売却後もローンが残ってしまいます。
この残債をどのように返済していくのかについても確認しておきましょう。
最終的に残債をどうするのかは金融機関との交渉によって決まることです。
しかし、任意売却専門の不動産会社は「過去の経験からはこうなる」とか「毎月分割返済していった場合には毎月〇〇万円の返済になる」などの具体的なシミュレーションを出してくれます。
残債についてはどのように返済していくのかを確認し、任意売却後の生活設計も検討しておきましょう。
引越しのタイミングと費用について
任意売却の相談の際には、引越しについて確認することも非常に重要です。
売却できそうなタイミングによって新居を確保しておかなければなりません。
また、任意売却では金融機関から引越し費用を負担してもらえることがあります。
もらえる引越し費用の相場は20~30万円です。
これは金融機関との交渉によりますが、任意売却専門の不動産会社は「この金融機関は引越し代を〇〇万くらい負担してくれるだろう」などの見通しを持っているので、引越し代についても事前に確認することができるでしょう。
任意売却の相談の際には、どのタイミングで引越しの準備をしておくべきか、引越しの費用はいくら用意すればよいかなどを確認するようにしてください。
まとめ
任意売却の相談先として、不動産会社、弁護士や司法書士、金融機関の3つをあげることができますが、任意売却だけを行うのであれば不動産会社が最もスムーズかつ低コストで手続きすることができます。
ただし、任意売却は通常の不動産売却とは異なり、専門知識やノウハウが必要になるので、任意売却を専門に行う不動産会社へ相談するのがよいでしょう。
任意売却専門業者の選び方は、次の5つのポイントをみて信頼できるかどうかを確認しましょう。
- 過去の実績が多い
- 任意売却を専門としている
- 弁護士や司法書士と連携した不動産会社
- 電話などの対応に問題がない
- 仲介手数料以外を要求しない
任意売却は競売と比較して圧倒的にメリットがあるので、滞納が長期化して競売になってしまう前に、信頼できる不動産会社へ任意売却の相談を行うようにしてください。